猫の口内炎の原因と治療法は?痛くて難治性のものが多い!

こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。

今日は猫の口内炎のお話。

口内炎ができると、ご飯をたべるのも嫌になってしまいますよね。

同じように、猫も口内炎になります。

ただ、人の口内炎の場合は口の中にポツポツとでき、数日で治ることが多いですが、猫の場合は歯肉や舌、口全体に口内炎がみられ、激しい痛みや腫れを伴うことがあり、一生付き合わなければいけないことも多いです。

4歳以降の成猫の8割が口内炎をもっているとも言われています。

今日は、猫の口内炎について解説します。

目次

早めに気づきたい!猫の口内炎の症状は?

口内炎の主な症状をあげてみます。

  • 口臭
  • 歯肉の腫れ・赤み
  • よだれ
  • フードを食べない(食べにくい)
  • 口を気にする
  • 痛み

軽度であれば歯肉に赤みや腫れが見られるのみで、とくに第四前臼歯と言って奥歯に見られることが多いので、この時点では気づきにくいと思います。唇をめくって奥の歯茎を見せてくれる猫ちゃんはなかなかいませんからね。

ひどくなると口臭口を気にする口を触られるのを嫌がるなどの症状が見られるようになり、この辺りであれ?口に違和感でもあるのかな?と診察に来ることが多いですね。

さらに重度になると、痛みよだれ口からの出血食欲不振体重減少が見られるようになります。

猫の口内炎は気づきにくく、来院した時にはすでに口の中が真っ赤になるほど腫れてしまっていることが多いです。

猫の口内炎の原因は?

ウイルスや免疫低下、口腔内細菌、免疫反応の異常が原因と考えられていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

さらに、原因は1つではなく複数が絡み合って起こるので、とても複雑でやっかいです。原因はこれだ!と確認するすべもありません。

ウイルス

上部気道ウイルス(カリシウイルス猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)などのウイルスの感染が関連しているのでは?と考えられています。

免疫低下

猫白血病ウイルス(FeLV)猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染や腎不全、糖尿病などの持病、ストレス、薬剤の影響によって免疫が低下し、歯肉口内炎がみられることが多いです。

口腔内細菌

歯周病の猫の口腔内では細菌が増殖していて、口臭や歯肉の腫れ、痛みの原因となります。

抗生剤投与や歯石除去により炎症が一時的に軽減されることからも、口腔内細菌が関わっているのではないかと考えられています。

歯垢内の細菌に対する過剰な免疫反応

歯垢内の細菌や細菌が出す毒素に対する過剰な(異常な)免疫反応が原因と考えられています。

自分の歯肉を攻撃してしまい、炎症が強く起こるんですね。

猫の口内炎の治療法は?

治療のポイントとしては2つ。

対症療法で症状を緩和する方法(内科的治療)根本の原因を取り除く方法(外科的治療=抜歯)です。

この程度の症状ならこの治療!と決められているわけではなく、軽度であっても先のことを考えて抜歯を選択する人もいれば、その逆もあり得ます。

獣医師とよく相談して…ということになるかと思います。

内科治療

  • ステロイド
  • 抗生剤
  • 免疫抑制剤
  • インターフェロン
  • 非ステロイド系炎症剤
  • ラクトフェリン
  • 口腔内善玉菌

口内炎の原因や症状によって異なりますが、感染に対する抗生剤やインターフェロン、炎症や痛みを抑えるためのステロイド剤、消炎鎮痛剤、免疫抑制剤などを投与することが多いです。

しかし、内科治療はあくまで症状を緩和させるのが目的であって、一時的に症状は改善するけど完治するわけではなく、投薬を中止すると再び症状は悪化します。

中でもステロイドは治療初期の効果は絶大なのですが、だんだん維持するのが難しくなります。最終的には初期よりも悪化し、皮膚病や糖尿病などの二次的に病気を発症させる、なんてこともありえます。

そこで、次の歯科治療=抜歯をやってみる?となるわけです。

歯科治療=抜歯(全抜歯もありうる)

口内炎を起こしている場合、たいがい歯石もガッチリ付着しています。歯石は細菌のかたまりであり、歯肉を直接的に刺激して口腔内に強い炎症を起こします。

まずは、この細菌のかたまりである歯石の除去を中心に行います。

歯石除去は、ある程度の改善は期待できますが、処置後再び歯石が付いてしまうので、家庭で歯磨きなどのケアができないと、長期的な効果は期待できません。 

そこで有効な治療法となるのが抜歯

症状が強い部分だけ抜歯することもあれば、全ての歯を抜くこともあります。

歯肉口内炎の猫30頭に全臼歯抜歯の処置をおこなったところ、術後1〜2年で完治したものが60%、著名な改善がみられたものが20%、全く反応がなかったものが7%であった。

(参考文献)Hennetら : J. Vet. Dent., 14, 15-21, 1997.

にわくま
全抜歯は唯一完治が見込める処置とも言えます。もちろんこれで治らない子もいます。

しかし、術前に口内炎が重度であったものや、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルス陽性のものでは治療効果が低い傾向にあるようです。

にわくま
その子によって状態はさまざまなので、今挙げた治療法でうまくいくとは限りません。かかりつけの獣医師と相談してみましょう。

全抜歯と言われても…なかなか抵抗あるよね

猫の口内炎がひどくて獣医さんに診てもらったら全抜歯と言われたよ。でもそこまでしなきゃダメ?歯がなくなって大丈夫?麻酔かけるんでしょ?

もちろん対症療法である程度コントロールできることもあるし、全ての猫ちゃんが全抜歯!というわけではないです。でも最終的には全抜歯しか改善の余地がないことも事実。内科療法でできるところまでやってみて、それでも改善がなければ、じゃあ全抜歯しましょうかっていう提案になると思うんですよね。

麻酔をかけて歯を全て抜きましょうって私たち獣医師は簡単に言うけれど、(いやもちろん全抜歯ってすごく手間がかかるし麻酔時間も長くなるので、簡単ではないんだけれど)飼い主さんによっては受けいれられない人もいるわけで。

麻酔下とはいえ、侵襲性の強い処置ですし、歯がなくなることに抵抗があってなかなか同意が得られないこともあったり。人でも歯がなくなるってどんだけ不便なんだ!?入れ歯するのか!?って。

なので獣医師と飼い主さんの間でいかに考えをすり合わせていくかが重要だなと思っています。やっぱり食べることって生きていく上で必須なので、口内炎で苦しむ猫ちゃんが減ればいいなあと思います。

(参考文献)

Bellow : 24th Annual Veterinary Dentsl Forum. Abstract, P189, 2010

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