いぬ

犬の歯周病の症状や原因とは?悪化する前に予防・早期発見を!

こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。

私は今年、人生で初めて歯医者さんへ行きました。

「年齢の割にとてもきれいだし、虫歯も少ない」

と褒められましたが、歯石はたっぷり蓄積していたようです…笑

定期的に歯科検診に行かないとダメですね…

さて、今日は歯についての話。

人と同じように、犬も歯周病になります。

犬の高齢化が進むにつれて、歯周病になるわんちゃんも増えてきています。

そこで今日は、犬の歯周病の原因や症状について解説します。

歯周病とは?

歯周病とは、歯肉炎と歯周炎を総称したものを言います。

歯肉炎・歯周炎について

歯肉炎と歯周炎はどう違うの?

とよく聞かれます。

  • 歯肉炎…歯肉の炎症のみにとどまっているもの
  • 歯周炎…歯肉だけでなく、歯根膜やセメント質、歯槽骨といった歯周組織まで炎症が及ぶもの

下の図を見ながら説明します。

歯の断面図

食べ物を食べて歯磨きをしないと、歯の表面や、歯と歯肉の間に歯垢が蓄積します。

歯垢には非常に多くの細菌が含まれていて、この細菌が産生する毒素によって炎症が起きます。

この炎症が歯肉のみに起こっている状態が歯肉炎です。

歯肉炎の時点で治療すれば炎症はおさまります。

しかし、それを放置していると、歯肉だけでなく、歯根膜やセメント質、歯槽骨といった歯を支えている歯周組織まで炎症が及んでいる状態が歯周炎です。

次の2枚の写真のうち、どちらが重度の歯周病に見えますか?

歯石が沈着した犬の歯
歯周病の犬の歯

2枚目はキレイな状態、1枚目の方が、汚れや歯石がたくさんついていて、歯周病の程度がひどいと思った人が多いのではないでしょうか。

実際に口腔内レントゲンをとってみると、どちらも同程度の歯槽骨の破壊があり、歯周病の重症度は同じぐらいでした

歯が汚い、歯石が付いている=歯周病

と勘違いされる飼い主さんが多いですが、そうではありません。

逆に、見た目歯がキレイだから歯周病じゃない、大丈夫というわけでもありません。

にわうさ
にわうさ
見える範囲の歯がキレイだから歯周病じゃないとは言い切れないないということね。

私が診察している限り、来院する約8割の犬が歯周病に近い状態ではないかと思います。

歯周病の症状は?

  • 口臭
  • 歯肉の腫れ・赤み
  • 歯肉からの出血
  • 鼻水
  • くしゃみ
  • 鼻血

があげられますが、なかなか初期で発見するのはむずかしく、来院した時には重症化していることが多いです。

歯周病の診断法は?

  • 身体検査
  • レントゲン検査(口腔内)
  • プローブ検査

まずは、口臭がないか、腫れがないかをよく確認します。

これだけだは歯周病とは診断できず、レントゲン検査で歯根膜や歯槽骨の評価をすること、プローブで歯周ポケットの深さを測定することが必要です。

にわくま
にわくま
これらの検査は基本的に全身麻酔が必要になります。

歯周病になりやすい犬の特徴は?

野生動物では歯周病は稀であるという報告があります。

一方、犬や猫の飼育動物では歯周病が多く発生します。

そのなかでも歯周病になりやすい犬の特徴をあげてみます。

  • 高齢犬
  • 小型犬
  • 短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズーなど)
  • 全身性疾患で免疫が落ちている
  • やわらかいフード(缶詰)を食べている
  • 歯磨きなどのオーラルケアをしていない

高齢になると免疫力が低下し、歯周病細菌が増加しやすい傾向にあるので、歯周病が多くみられます。

大型犬に比べると、小型犬は顎の大きさに対して歯が大きい(歯と歯の間がせまい)ので歯垢がたまりやすく、歯周病になりやすい。

また、短頭種は口腔内がせまく、歯の生えている位置や向きがバラバラで、隙間ができやすく、歯周病になりやすい。

食餌内容も重要なポイントですね。

歯が磨耗しやすい食餌や、咀嚼回数が多いドライフードを与えている場合は、歯垢・歯石が付きにくくなります。

歯周病の原因は?

では、どのように歯周病が進んでいくのかみてみましょう。

まず、正常な歯はこちら。

正常な歯

歯肉や歯周組織もキレイで、歯周ポケットもありません。

次は、歯周炎を起こしている歯。

歯周炎を起こしている歯
  1. 唾液由来のペリクル(膜のようなもの)が歯の表面を覆う
  2. ペリクルの上に細菌が付着
  3. 細菌が増殖し、歯肉に炎症が起こる(歯肉炎)
  4. 歯肉が腫れ、歯と歯肉の間に歯周ポケットができる
  5. 歯周ポケット内に細菌が増殖し、炎症物質を放出
  6. 炎症物質に反応した破骨細胞により歯根膜やセメント質、歯槽骨が破壊される(歯周炎)
  7. さらに炎症が進行し、歯周ポケットは歯がぐらぐらになるまで広がる
  8. 最終的に歯が抜けると、炎症はおさまる

歯周炎の歯では、このようなことが起こっていると考えられています。

人とほぼ同じように進行していくんですね。

にわくま
にわくま
細菌は、歯に付着した後、多糖体(ネバネバしたもの)を産生して膜を作る。これをバイオフィルムといい、簡単には落ちません。

歯磨きや歯石除去によって機械的に除去するしか方法はありません。

歯周ポケット内で増殖する細菌は、Porphyromonas属などの嫌気性菌(酸素がなくても増殖できる細菌)が中心

歯周病が悪化すると全身疾患へとつながる可能性も

歯周病はかなり重症になるまで気づかないのか、放置されがち。

  • 下顎骨骨折
  • 外歯瘻・内歯瘻
  • 口鼻瘻
  • 呼吸器疾患や循環器疾患など全身疾患

など、歯だけの問題ではなく、全身疾患の原因にもなるのです。

たとえば、歯周病が進行し下顎骨まで溶けると、ちょっとした衝撃で簡単に折れてしまうことがあります。

内歯瘻・外歯瘻は、歯周組織が破壊されて瘻管ができ、皮膚や歯肉に穴が開いてしまうことをいいます。

口鼻瘻は、口と鼻を隔てる骨が溶けてしまい、口と鼻がつながった状態になってしまいます。

にわくま
にわくま
くしゃみや鼻水がひどくなります。

口の中だけではなく、全身にも影響を及ぼします。

歯周病菌は唾液や呼吸、歯周ポケットからの血管を介して全身をまわり、悪さをします。

たとえば人では、肺炎やぜんそく、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などを引き起こすと言われています。

犬の場合も心臓や肝臓、腎臓などに悪影響を及ぼすと考えられます。

歯周病は予防・早期発見が重要!

歯周病は飼い主さんが予防できる病気です。

しかし、歯周病に気づかず、放置されていることが非常に多いです。

たかが歯、と甘くみてはいけません。

歯周病を放置していると、全身へ悪影響を及ぼすこともあります。

予防・早期発見で防げる病気なので、家で歯磨きをする、定期的に動物病院でチェックしてもらうなど、できることからはじめてみましょう。

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