こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
今日は「ウサギの皮膚病」についてのお話。
ウサギの被毛は非常に密で高温多湿に弱く、皮膚病が発生しやすいです。
また皮膚(表皮)も薄く、刺激や外傷に弱いという特徴があります。
今日はうさぎに多く見られる皮膚の症状や考えられる原因を解説します。
ウサギの皮膚疾患の症状は?
ウサギの被毛は密なので、犬や猫に比べると皮膚の異常に気づくのは難しいかもしれません。
具体的に、どんな皮膚の症状がみられるかというと、
- 脱毛
- 皮膚や毛が湿っている、濡れている
- 痂皮(かさぶた)
- フケ
- かゆみ(皮膚をかく、なめる)
- 皮膚にできもの
犬や猫と同じような症状なのですが、ウサギの被毛は非常に密なので、パッとみるだけでは気づきにくいんですよね。
脱毛やかさぶた、フケは、密な被毛をかき分けないとわからないことが多いです。
逆に気づきやすい症状というと、皮膚や毛が湿っていたり濡れていること。とくに鼻周りや陰部周りでこういった症状がみられます。
飼い主さんが皮膚の症状に気づいて来院するというよりは、健康診断や他の主訴で来院したときに皮膚病を発見するというパターンが多いです。
ウサギの皮膚疾患で考えられる原因は?
ウサギの皮膚疾患の原因として考えられるものには、感染性の皮膚疾患(細菌、真菌、寄生虫)や物理的な刺激による皮膚疾患、心因性の皮膚疾患、腫瘍、膿瘍などいくつかあります。
その中でも、比較的多いものを順番にみていきましょう。
細菌性皮膚疾患(中でも多いのは湿性皮膚炎)
細菌性皮膚疾患の中でも、皮膚が湿ることにより二次的に細菌が増殖し、皮膚炎を起こす湿性皮膚炎が多く見られます。
ウサギは毛が密に生えていて、何かしらの原因で皮膚が湿るとなかなか乾かず、細菌が増えてしまいます。
ウサギの皮膚病では比較的多いので、注意が必要です。
皮膚が湿る原因としては…
- 高温多湿の環境
- 不衛生な環境
- よだれ(歯科疾患による)
- 涙が多い
- 肉垂(肥満のメス)
- 下痢
- 尿の異常(膀胱炎、尿失禁など)
目の周り、お尻周り、陰部周り、下顎の皮膚でよくみられるので、日頃からこまめにチェックして拭くなど、清潔に保つことが重要です。
原因菌には、以下のようなものがあります。
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
- Escherichia coli(大腸菌)
- Pasterella multocida(パスツレラマルトシダ)
- Pseudomonas属菌(シュードモナス属菌)
黄色ブドウ球菌は皮膚にもともと存在する常在菌ですが、さまざまな原因で皮膚バリア機能が低下すると、増殖して皮膚炎を起こします。
また、外傷や歯科疾患が原因で皮下膿瘍(皮膚の下に膿がたまる)ができやすく、この原因菌が大腸菌やパスツレラマルトシダです。
治療は抗生剤でおこないます。
抗生剤で治療しますが、上にあげた根本的な原因を改善しなければいけません。
真菌性
カビですね。
若齢のウサギでよくみられます。
皮膚糸状菌(そのなかでもとくにTrychophyton mentagrophytes)が原因となることが多い。
通常は感染しても無症状ですが、若齢、高齢、妊娠中など免疫が低下しているウサギや不衛生な環境にいるウサギは発症しやすいです。
かゆみやフケ、脱毛がみられ、四肢や顔に発症が多いです。
病変部の被毛の真菌培養検査で診断します。
抗真菌薬で治療しますが、なかなか治りにくく、治療は長期にわたります。
寄生虫性
- ウサギツメダニ
- ウサギズツキダニ
- ウサギキュウセンヒゼンダニ
- 疥癬
- ハエウジ症
- ノミ
寄生虫による皮膚病は比較的多いですが、そのなかでもとくに多いのはウサギツメダニ。
被毛やフケを顕微鏡で観察して、虫体や虫卵を検出することで診断します。
足底皮膚炎(ソアホック)
後肢の足裏にみられる皮膚病です。
- 不適切な環境(固い床やワイヤーメッシュ)
- 肥満
- 運動不足
が原因となります。
足の裏(とくにかかと)の毛が抜け、その脱毛部分に炎症が起こり、潰瘍ができてしまいます。
ウサギの足裏には犬や猫のような肉球がないので、地面や床材が直接皮膚にあたってしまうんですね。
悪化すると痛みが強くなり、動くのを嫌がってしまいます。
治療法は抗生剤の投与と環境の改善。
心因性
環境の変化やストレス、メスのホルモンバランスの乱れなどが原因で過度のグルーミングや毛抜き行動をしてしまうことがあります。
同時に食欲不振になってしまう子もいます。
口が届きやすい四肢や脇腹に脱毛がみられます。
毛抜き行動は自分で毛を引き抜いてしまうもので、メス(肉垂あたり)で多くみられます。
治療は原因を取り除くこと。
メスは避妊手術(子宮卵巣摘出)をおこなうといいかもしれません。
腫瘍
ウサギの皮膚腫瘍の発生率はそんなに高くはないですが、直径数㎝の腫瘍ができることがあります。
毛芽腫(基底細胞腫)という皮膚腫瘍が最も多いという報告があります。
まとめ
ウサギの被毛は非常に密で皮膚疾患になりやすいですが、その症状に気づかないことが多いです。
また、ウサギの皮膚病は皮膚だけの問題ではなく、下痢や歯科疾患など、ほかの病気が隠れている可能性もあります。
おうちでウサギの皮膚をじっくり観察したり触ったりするのはなかなか難しいと思うので、健康診断をかねて定期的に動物病院へ連れていってみましょう。
参考文献:Incident of skin disease in Rabbit at an Animal Clinic,
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