こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
ウサギの呼吸の異常ってなかなかわかりづらいですよね。
はっきりとした症状がみられず、重症になってから発見されることもしばしば。
今日はウサギの呼吸器の異常について解説します。
Contents
ウサギの呼吸の仕方
まず、ウサギの正常な呼吸について。
ウサギといえば、常に鼻をヒクヒク動かしているのが特徴。
かわいいですよね。
正常な状態であれば、1分間に20〜120回、鼻をヒクヒク動かしています。
しかし、この動作は呼吸とは一致しません。
正常な呼吸数は、1分間に30〜60回。
ウサギの呼吸器の症状
では、ウサギの呼吸器症状としてどのようなものがみられるのでしょうか。
- 鼻水
- くしゃみ
- 咳
- 呼吸異常
以上4つが代表的な呼吸器症状。
犬や猫と同じですね。
鼻水・くしゃみ
ウサギのスナッフルといわれており、よくみられる症状。

咳
ウサギは咳をすることがあまりなく、くしゃみと間違われることもよくあります。
犬や猫の場合、咳の原因は呼吸器か循環器のどちらかが原因で、この鑑別をすることが重要。
しかし、ウサギの場合は、「咳」なのか「くしゃみ」なのかがわかりにくいことや、そもそも咳をあまりしないため、この鑑別が非常に難しいです。
異常な呼吸
ウサギは通常、鼻呼吸。
さらに、正常なウサギは横隔膜呼吸なので、胸の動きがぱっと見てわかるような呼吸(胸式呼吸)は異常な呼吸と考えましょう。
鼻の穴が大きく開いて呼吸する、開口呼吸をする、ゆっくり深い呼吸をしている、などは呼吸が荒い、異常な呼吸と言っていいでしょう。
ウサギの呼吸が荒い・早いときの検査法は?
次に、ウサギの呼吸が荒い・早い場合に行う検査について。
- 問診・身体検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- 病理検査
問診・身体検査
まずは問診。
元気・食欲はあるか、排便はきちんとあるか、環境の変化はなかったか、など詳しく確認します。
視診・触診・聴診では、呼吸状態はもちろん、鼻腔の状態はどうか(鼻汁がないか)、顔が腫れていないか、眼球突出(眼が飛び出ている)がないかなどを診ていきます。
レントゲン検査
頭部、胸部のレントゲンで鼻腔や歯、肺に異常がないか確認します。
肺炎や気管支炎、心疾患、胸水、腫瘍などの診断に有効。
しかし、犬に比べるとウサギは腹腔が大きく、胸腔は狭いのでレントゲン所見からわかることは少ないかもしれません。
また、ウサギは成長しても胸腺が残るので、心臓との境目が判断しづらく、心臓や肺の評価がしにくいのも難点。
超音波検査
肺に腫瘤がある場合や、胸水がたまっている場合は、その生検を行う際のガイドとして有用。
病理検査
鼻腔内でのストロー生検が可能。
ウサギの呼吸が荒い・早い場合に考えられる原因は?
ウサギの呼吸異常の原因を考える場合、まず、その部位を特定する必要があります。
大きく分けると、呼吸器か心臓か、です。
- 上部呼吸器疾患:鼻炎・副鼻腔炎など
- 下部呼吸器疾患:気管支炎・肺炎など
- 心疾患
- 熱中症
上部呼吸器疾患
呼吸器は上部と下部に分けて考える必要があります。
鼻、鼻腔から咽頭、喉頭までが上部呼吸器。
このどこかに炎症や感染などの異常があります。
ウサギでは、咽喉頭の疾患はほとんどなく、歯牙疾患に関連した鼻腔・副鼻腔炎が多いです。
下部呼吸器疾患
喉頭よりも肺側の気管、気管支、細気管支、肺を下部呼吸器といいます。
肺炎や肺水腫、肺腫瘍など。
心疾患
ウサギの心疾患で多いのが僧帽弁閉鎖不全症。
犬と同じですね。
咳をすることはあまりなく、呼吸困難や失神、元気食欲低下、あまり動かなくなるなどの症状がみられます。
しかし、これらの症状は、重症になって初めて現れることが多いので、飼い主さんも気づかないまま突然亡くなってしまうこともあります。
熱中症
ウサギは寒さに強いが、暑さには弱い動物です。
室温が28℃を超えると熱中症のリスクが高くなります。
ウサギは人のように皮膚から発汗できず、犬のようにあえぎ呼吸を効果的に行うこともできません。
少しでも体温を下げるために、呼吸を速くすることで熱を逃がそうとするんですね。
そのほかにも、よだれや耳が赤くなるなどの症状がみられます。
ウサギの呼吸が荒い・早い場合の対処法は?
ウサギの呼吸に異常がみられた場合、原因によってその治療法や対処法が異なります。
私の経験からいうと、ウサギの心疾患には遭遇したことがありません。
なので、ここでは呼吸器疾患についての対処法をあげてみます。
- 抗生剤投与
- ネブライザー(噴霧治療)
- 酸素吸入
主に抗生剤の投与が行われますが、抗炎症剤や抗ヒスタミン剤、鼻水を溶かす粘液溶解剤を併用することもあります。
ネブライザーも有効な治療法。
抗生剤や粘液溶解剤を含んだ霧で満たしたボックスにウサギを入れ、薬剤を吸入させる方法です。
ウサギは基本的に鼻呼吸なので、この霧はすべて鼻腔を通過します。
治療においてやっかいなのが、ウサギの鼻腔の軟骨は迷路のような複雑な構造しているということ。
ここに細菌が入り込むので、薬剤が届きにくいんです。
まとめ:ウサギの呼吸が荒い・早い場合は緊急状態!早めに病院へ
一般的に呼吸器の異常は気付きにくく、症状が出ている時にはすでに重篤、緊急である場合がほとんど。
一刻も早い検査や治療が必要です。
もちろん、全てが病気というわけではなく、ストレスや緊張、加齢性の呼吸異常という可能性もありますが、それを飼い主さん自身で判断するのは困難です。
少しでもおかしいなと感じたら、動物病院へ連れて行きましょう。
ウサギに多い病気や症状を獣医師監修のもとに解説しています。
家でのヘルスケアや看護のポイントもわかりやすく書いてあります。
ウサギを飼っている人は家に一冊欲しい本としてオススメ。