子ウサギの下痢の原因と対処法は?緊急を要する!

こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。

にわうさ

子ウサギちゃんが下痢をしているの。原因は何かしら?小さいし心配…

にわくま

下痢の原因や対処法は大人のウサギさんと違ったところがいくつかあるよ。

生まれて間もない子ウサギが下痢をしたら心配ですよね。

大人のウサギに比べて小さいですし、体力もないのですぐ弱ってしまうのではないか…

今日は、「子ウサギの下痢」についてお話しします。

目次

子ウサギは母乳や盲腸便で腸内細菌叢をつくる

大人のウサギの消化管は腸内細菌がたくさん住んでいますが、生まれたばかりの子ウサギの消化管は無菌状態です。

このままでは必要な栄養を得るための後腸発酵をおこなうことができません。

そこで、生後8週までの間に腸内細菌叢をつくっていきます。

そのために必要なのが母ウサギの盲腸便を食べること。

だいたい生後3週までに食べ始めます。

盲腸便には、豊富な栄養とともに母ウサギの腸内細菌も含まれています。

盲腸便を食べることによって、母ウサギの腸内細菌叢をそのままもらうことができるんですね。

その後、自分の盲腸便も食べるようになり、バランスのとれた腸内細菌叢ができあがります。

ここで知っておきたいこと。

胃のpH(酸性・アルカリ性の程度をあらわすもの)について。

pH7より低ければ酸性、高ければアルカリ性となります。

成ウサギと子ウサギでは胃のpHに大きな違いがあります。

胃のpH

成ウサギ : pH1〜2(強酸性)

子ウサギ : pH5〜6.5(弱酸性)

成ウサギであれば胃のpHは強酸性なので、口から入る細菌は胃で殺菌されてしまいます。

これに対して、子ウサギの胃のpHは弱酸性。

口から取り込んだあらゆる細菌は殺菌されることなく後腸までたどりつき、腸内細菌叢を作ることができるというわけですね。

また、母乳を飲むことによって移行抗体を獲得して、免疫もついていきます。

そして離乳までの生後4〜6週間で、強酸性だった胃のpHは弱酸性に近づいていきます。

さて、なぜこんな話をしたかというと、子ウサギの下痢の原因と深く関わっているからです。

子ウサギの下痢の原因は?

細菌性

今お話ししたように、生後3〜8週齢の離乳期の子ウサギは、口から入ってくるあらゆる細菌を胃で殺菌することができないので、細菌感染しやすい時期でもあります。

つまり、善玉菌だけでなく、病原性大腸菌などの悪玉菌も胃を通過して腸までたどりついてしまうということなんですね。

そのため、子ウサギの腸内細菌叢は非常に不安定で、ちょっとした環境や食餌の変化が下痢の原因となります

Clostridium(クロストリジウム)属菌病原性大腸菌が原因になると考えられますが、特定するのは困難です。

クロストリジウム属菌は毒素を産生する細菌ですが、正常であっても盲腸に少数存在しています。

しかし、腸内細菌バランスが崩れて異常に増殖すると、毒素を大量に産生して腸毒素血症となり、数日で死に至ることもあります。

寄生虫性

子ウサギの糞便検査でよくみられるのはコクシジウムという寄生虫です。

顕微鏡でみるとこんな感じです。↓

ウサギのコクシジウム

生まれたばかりの子ウサギであれば、ペットショップやブリーダーのところで感染していると考えられます。

ウイルス性

離乳直後の子ウサギではロタウイルスやコロナウイルスに感染する可能性がありますが、ペットのウサギではほとんどみられません。

食餌性

離乳直後のウサギは、成ウサギに比べるとデンプンをうまく消化できません。

病原性細菌は、この消化吸収できなかった炭水化物を利用して増殖してしまうので、炭水化物を与えすぎるのも下痢の原因となります。

にわくま

細菌性やウイルス性など原因をいくつか書きましたが、子ウサギの糞便検査をしたときに、コクシジウム以外の病原体を発見するのは難しいです。

子ウサギの下痢の治療法は?

子ウサギの下痢は突然発症することが多く、数日〜1週間ほどで死んでしまうことが多いです。

下痢以外にも、食欲不振やお腹がはっているなどの症状がみられることがあります。

子ウサギが下痢をしたとき、どんな治療法があるかというと…

  • 生菌剤
  • 抗生剤
  • 下痢止め
  • 皮下補液

生菌剤

生菌剤とは、プロバイオティクスともよばれ、腸内細菌叢のバランスを改善し、宿主に有用に働きかける生きた微生物添加物、のことを言います。

代表的な菌としては、乳酸菌ビフィズス菌糖化菌酪酸菌などがあります。

子ウサギの胃のpHは弱酸性なので、これらの細菌が胃で殺菌されにくく、盲腸まで届きやすいという利点があります。

これが成ウサギと大きく異なる点です。

確実な治療効果が証明されているわけではないですが、腸内細菌叢のバランスの改善を期待して投与します。

抗生剤

ウサギは抗生剤に対するリスクが高いので、慎重な投与が必要です。

便の状態をみて腸内細菌叢のバランスの乱れがありそうなら、安全性の高い抗生剤を使用することがあります。

下痢止め

下痢は止めない方がいいとよく言われますが、脱水がひどい場合など、状況によって使用することがあります。

皮下補液

下痢をしている場合、脱水をともない、自分で食べられないことが多いので、補液をします。

子ウサギの下痢の予防法や対処法はある?

子ウサギの下痢は突然発症し、数日で急変して死んでしまうこともあるので、早く病院へいきましょう!

お家で下痢を起こさない予防法としては、

  • ストレスを避ける
  • 炭水化物少なめ、不消化生繊維多めの食餌にする
  • 生菌剤を与える
  • 離乳直後の子ウサギの購入を避ける

環境や食餌に気をつけるのは当然かもしれません。

しかし一番良いのは、離乳期の小さいウサギさんを家に迎えるのは避けること。

ペットショップへ行くと、小さくてとても可愛らしいウサギさんがたくさんいますよね。

ですが、早いうちに親から離れてしまうと、腸内細菌叢や免疫ができあがる前に人の手に渡ってしまうことになります。

環境の変化というストレスも加わって、下痢や食欲不振の原因になります。

家に迎える時は、見た目やサイズだけではなくて、月齢やいつ離乳したのかなど詳しく確認してみるといいですね。

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