犬をバリカンで刈ったら毛が生えてこなくなった？！毛刈り後脱毛症とは？

こんにちは、獣医師のにわくま（@doubutsu_garden）です。

あたたかくなってきて、そろそろうちのわんこもトリミングに出そうかなという人も多いのではないでしょうか？

夏になるし、サマーカットしてもらおうかなという人もいると思います。

今日は、バリカンで毛刈り（カット）したあと、長期にわたって毛が生えないことがある毛刈り後脱毛症についてお話ししたいと思います。

犬の正常な毛周期は？

毛周期とは、髪が生えて抜け落ち、再び生えてくる周期のことで、人と同じように犬にも毛周期があります。

まずは、正常な毛周期をみていきましょう。

人と同じで、

というサイクルで発毛と脱毛を繰り返しています。

このサイクルのどこかに異常があると脱毛が多くなり、毛が薄くなります。

犬種によって毛周期はばらばらで、抜け毛の量にも違いがあります。

バリカンで毛を刈ったら生えてこない？！

普通は、毛刈りをして３週間ほどで育毛がみられます。

しかし、まれに３週間以上たっても毛が生えない、伸びない子がいます。

全体的に生えない場合もあれば、一部分だけまばらに生えてくる場合もあります。

このように、バリカンで毛刈りをしたあと、長期にわたって発毛、毛の再生がみられない状態のことを毛刈り後脱毛症といいます。

下の写真は、３ヶ月ほど前に首からおしりまでバリカンで毛刈りをしたあと、毛が短いままなかなか生えそろわないロングコートのチワワちゃんです。

腰の部分だけ皮膚が露出して毛がまばらなのがわかりますね。

トリミング以外にも、手術や静脈点滴、採血、ケガの処置などでバリカンで毛刈りを頻繁におこなうと起こることがあります。

ポメラニアンに多いですが、アラスカンマラミュート、サモエド、シベリアンハスキーでも報告されています。

バリカンで毛を刈った後に毛が生えない原因は？

原因ははっきりわかっていません。

しかし、毛検査をすると、ある特徴が見えてきます。

毛刈りの後、伸びてこない部分の毛を顕微鏡で観察すると、「退行期」にあたる毛包が多いのです。

バリカンで毛刈りをすることで、「成長期」の毛包が刺激を受けて「退行期」に入ってしまい、成長が停止してしまうのではないかと考えられています。

毛刈りによって皮膚が見える状態になることによって、体温調節が変化するために毛周期に影響がでることが原因ともいわれています。

しかし、バリカンでの毛刈りが原因と確定する検査がないので、あくまでも経過や症状から診断することになります。

治療法はある？

治療法はありません。

経験上、治療をしなくても半年から1年で生えそろうことが多いように思います。

残念ながら、毛が短いまま伸びなくなってしまった子もいます。

育毛の対症療法として、メラトニンや甲状腺ホルモンを投与することもあります。

まとめ

バリカンで毛刈りをした後に毛が生えなくなってしまったということで来院する患者さんは比較的多いです。

病気というわけではないので、心配する必要はありませんが、見た目は気になりますよね。

はさみでカットして毛が生えなくなった子はみたことがないので、おそらくハサミカットであれば大丈夫だと思います。

毛刈り後脱毛症は、ポメラニアンやアラスカンマラミュート、サモエド、シベリアンハスキーに多いといわれているので、心配な方ははさみカットしてもらう方がいいかもしれませんね。