こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
ハムスターみたいに小さい動物が下痢をしたら心配になりますよね。
「ハムスターの下痢の原因って何が考えられるの?」
「下痢の治療法や対処法はあるの?」
今日はハムスターの下痢について解説します。
ハムスターの消化管の特徴を知ろう
ハムスターは種子を主食とする草食性に近い雑食性動物です。
まず、知っておきたいハムスターの特徴として、大きな盲腸をもち、食糞するということ。
盲腸に住む微生物によってつくられるビタミンB群やタンパク質を効率よく吸収するためですね。
もうひとつは、なんといってもほおぶくろ。
食べ物をたくさんためこんでいる姿はなんともかわいいですよね。
ゴールデンハムスターでは直径約4㎝もあり、非常に伸縮性に富んでいます。
胃は、発酵がおこなわれる前胃と、消化酵素を出す腺胃の2つにわかれています。
正常便?下痢?
ハムスターの正常便は米つぶ大で楕円形、ころころしてます。
色は黒〜茶褐色。
下痢は、ペースト状で、やや明るい色。
血便をすることもあります。
下痢をするとケージや巣箱が便でよごれたり、体にも便がついて臭うので気づきやすいと思います。
ハムスターの下痢の原因は?
ハムスターの下痢の原因はいくつかあります。
大きく分けて感染症と非感染症。
どちらかというと感染症の方が多いような気がします。
- 食餌・栄養の問題
- 細菌性腸炎
- 寄生虫
- 腫瘍
細菌性腸炎と寄生虫が、感染症となります。
順番にみていきましょう。
食餌・栄養の問題
偏った食餌や栄養不良が原因。
たとえば…
- ヒマワリの種など、脂肪分の多いフード
- 水分の多い野菜
- 腐りかけの生野菜
- 糖質の多い果物
このようなものを与えすぎると下痢の原因となります。
ハムスターといえば、ほおぶくろにたくさんヒマワリの種などをつめこんでいる姿がかわいいですよね。
しかし、脂肪分の多いフードは問題で、食べすぎると、いわゆる悪玉菌といわれるクロストリジウム属菌や、日和見菌といわれるバクテロイデス属菌が増えて、乳酸菌が減少することが報告されています。
つまり、腸内細菌のバランスがくずれて下痢をしてしまうんですね。
思いあたることがあれば改善してみましょう。
細菌性腸炎
細菌が原因となる下痢のことをいいます。
しっぽや肛門周りが下痢で汚れるので、ウェットテイルとよばれています。(病名ではありません)
細菌性腸炎には、増殖性回腸炎、サルモネラ症、ティザー病、カンピロバクター症などがあります。
どんな細菌が原因になるかというと、
- Campylobacter jejuni(カンピロバクター)
- Lawsonia intracellularis(ローソニア)
- Salmonella属(サルモネラ)
- Escherichia coli(大腸菌)
- Clostridium piliforme(クロストリディウム属)
など。
これらの細菌が感染、増殖して腸炎を引き起こします。
経口感染し、親から子へ、そして子から子へと伝播していきます。
3〜8週齢の離乳したてのハムスターに多くみられます。
大人のハムスターでは、環境の変化や過密飼育などのストレス、栄養不良が原因で発症することが多いです。
犬や猫の細菌性腸炎と違うのは、死亡率が高いということ。
- 下痢で肛門周りが汚れている
- 毛づやがない
- 元気食欲がない
- やせてきている
このような症状がみられたら2〜3日以内に死亡してしまう可能性が高いです。
糞便検査で診断しますが、顕微鏡でみるだけでは何が原因菌なのか診断できません。
しかし、細菌性腸炎の場合、原因菌が何かを特定することはそんなに重要ではありません。
特定が困難ということもありますが、細菌性腸炎が疑わしい場合は、抗生剤を試験的治療として投与することが多いからです。
このほかにも、保温や皮下補液、強制給餌などの対症療法をおこないます。
寄生虫
- 小型条虫
- ぎょう虫
- トリコモナス
- ジアルジア
小型条虫
小型条虫は糞便検査で卵をみつけるか、糞便中に片節をみつけることで診断します。
しかも、多くのハムスターで感染していると思われますが、症状が出ないこともあります。
ハムスターを家にむかえたら、動物病院で検査、駆虫をしましょう。
駆虫薬はパモ酸ピランテルやプラジクアンテルを使います。
ぎょう虫
ネズミ盲腸ぎょう虫、ハムスター盲腸ぎょう虫、ネズミ大腸ぎょう虫がいます。
ぎょう虫の成虫は普段、大腸で生活していますが、メスは肛門近くに卵を産みます。
おしりにセロテープを当てて、それを顕微鏡で観察することで卵を検出します。
小学生のころ、おしりにシールをはってぎょう虫検査しましたよね?
あれと同じ検査です。
あ、今はやらないみたいですね。(汗)
顕微鏡で見るとこんな感じ。
駆虫薬はパモ酸ピランテルかイベルメクチンを使います。
トリコモナス
顕微鏡でみるとこんな感じ。
ピントが合っていないところもありますが、体を揺らしながら前に進んでいるトリコモナスがたくさんみえますね。
わりと多くのハムスターが感染していると思われます。
また、正常便をしているハムスターでも検出されるので、不顕性感染と考えられています。
トリコモナスが見つかっても、病原性が低く、下痢と関連しているのかは不明。
ジアルジア
ジアルジアは、顕微鏡でみると木の葉が舞うようにひらひら動くのが特徴。
私自身は、ハムスターのジアルジアにはあまり出会ったことがありません。
病原性があり、腸炎の原因となります。
とはいえ、トリコモナスもジアルジアも病原性は低く、治療してもすぐに再発します。
ハムスターとうまく共存しているのかもしれません。
治療すべきかどうかは悩むところです。
腫瘍
ハムスターでは腺胃の腫瘍が報告されています。
まとめ:ハムスターの下痢は数日で急変する可能性あり!家に迎えたらまずは病院へ。
ハムスターの下痢の原因は、軽度なものから数日で死んでしまう致死的なものまであります。
犬や猫の場合は、数日様子をみても大丈夫な場合もありますが、ハムスターは体が小さく、急変する可能性もあります。
とくに飼い始めたばかりのハムスターは要注意。
正常便にみえても寄生虫がいたりすることもあります。
そのなかには、人獣共通感染症となるものもあるので、ハムスターを家に迎えたら、まずは一度動物病院で検査を受けましょう。
日頃のケアから病気の予防まで、幅広い情報が凝縮されています。
獣医師も監修しており、分かりやすいのでオススメ。
こちらもエキゾチックの専門獣医師が執筆しています。
どちらかというと飼育本に近いです。
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