こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
前回、犬のフィラリア症の原因や症状についてお話ししました。
フィラリア症は発症すると死に至ることもあるので、予防が重要ということでしたね。
予防することで発症を防ぐことができます。
今日は、フィラリアの検査法と予防法についてお話しします。
犬のフィラリア予防の現状
全国300の動物病院の院長に対するアンケート
「犬のフィラリアの予防率はどれぐらいですか?」
1.60〜79%:148人
2.80〜99%:101人
3.50〜59%:38人
4.50%:13人
「1年間で犬フィラリア症と診断した頭数は?」
1.1〜5頭:170人
2.6〜10頭:52人
3.11頭以上:48人
4.0頭:30人
(参考)CLINIC NOTE No.83 2012
犬のフィラリア症の予防率が80%以上と回答した獣医師は全体の33.5%にすぎず、約半数の獣医師は60〜79%と回答。
犬のフィラリア予防もまだ十分ではないことがわかりますね。
また最近では、診察でフィラリアをみることは少ないといわれていますが、9割の獣医師が1年間で最低1頭はフィラリア症と診断しているんですね。
犬のフィラリアの検査法は?
基本的に、毎年フィラリア予防薬の投与前に必要なこととして、
- 問診、身体検査
- フィラリア検査(血液検査)
をおこなって、フィラリアが寄生していないか確認する必要があります。
問診、身体検査
まずは問診、身体検査をおこないます。
元気食欲はあるか、心臓の雑音がないか、などを確認。
検査
次に、フィラリアが寄生していないことを確認する検査です。
- 抗原検査
- 血中のミクロフィラリア検査
- 抗体検査
- エコー検査
- レントゲン検査
たいていの病院では、
抗原検査、血中のミクロフィラリア検査
この2つをおこないます。
抗原検査
フィラリアの成虫が分泌する物質を検出する検査ですね。
血液を1滴とって、専用の検査キットで判定します。
陽性であれば、フィラリアの「成虫」がいるということになります。
血中のミクロフィラリア検査
血液中をまわっているミクロフィラリア(フィラリアの子虫)を検出する検査です。
血液を1滴とって、顕微鏡で観察。
動いているミクロフィラリアがいれば陽性です。
昔はこのミクロフィラリア検査のみおこなっていました。
しかし、メスかオスのどちらかしかいない、寄生数が少ないなどの理由でミクロフィラリアが検出されない”オカルト感染”がみられるようになりました。
なので、抗原検査と合わせて両方行う必要があります。
(抗原検査のみおこなう病院も多いです)
これもよく聞かれる質問です。
ただし、年中予防薬を投与している場合は検査をしないこともあります。
フィラリアの予防法は?
さて、フィラリア検査で陰性が出たらいよいよ予防薬の開始です。
犬のフィラリア予防薬は駆虫薬
フィラリア予防薬といいますが、蚊に刺されないように予防する薬ではありません。
蚊に刺されて体内に入ったフィラリアの幼虫を1ヶ月(30日)ごとに”駆虫”する薬なんです。
投与して1ヶ月間予防するという薬だと勘違いしている人が多いですが、そうではありません。
なので、予防期間がとても重要。
フィラリアの予防期間は?
地域によって蚊が発生する時期が異なりますが、たとえば4月に蚊が出始めたなと思ったら、5月から投与開始しましょう。
そして、最後に蚊を見たのが11月であればその1ヶ月後の12月まで投与が必要です。
フィラリア予防薬の種類は?それぞれのメリット・デメリットは?
フィラリア予防薬は投与方法に分けると次の3タイプがあります。
- 飲み薬(錠剤もしくはチュアブルタイプ)
- 注射薬
- スポットタイプ
飲み薬
以前は錠剤が主流でした。
現在ではチュアブルといっておやつ感覚で食べられるタイプの薬が主流。
フィラリア以外にも、ノミやマダニ、消化管寄生虫、外部寄生虫を駆除できるものもあります。
注射薬
少し前に出たのが注射薬。
プロハート12という商品名で発売されました。
有効成分はモキシデクチン。
このモキシデクチンが小さな脂肪粒子の中に入っていて、接種した部位にとどまります。
その脂肪の粒子の中から、持続的にモキシデクチンが体内に放出されるという仕組みです。
- 年1回の注射で1年間予防できる
- 飲み忘れがない
- 下痢、嘔吐などの副作用が出ることがある
フィラリア予防薬は飲み忘れが多いものなので、年1回の注射で12ヶ月予防できるのはいいですよね。
フィラリア予防薬の比較と選び方
ほかにもありますが、動物病院でよく使われているものを比較してみました。
動物病院によって取り扱っている薬は異なるので、これがおすすめといのはむずかしいですね。
以前は錠剤か散剤(粉薬)しかなかったので選ぶ余地はほとんどありませんでした。
しかし、苦くて犬も飲むのを嫌がる、飼い主さんも与えるのが大変ということデメリットがありました。
最近では、チュアブルタイプが発売されて犬も飼い主さんも楽しく、そして飲み忘れなく予防することができるのではないでしょうか。
獣医師と相談してどれが合っているかいろいろ試してみるのもアリですよ。
途中で薬を変更することもできると思います。
まとめ:フィラリアは予防が重要!毎年検査してから正しい期間、予防薬投与を!
いかがでしたか?
犬を飼っている人であれば絶対にしておいてほしいフィラリア予防。
「うちの子は散歩に行かないし。」
「うちはマンションの高層階だから蚊はいないし。」
とフィラリア予防をしていない人も多くいるのも事実です。
しかし、家の中でもマンションの高層階でも蚊はいます。
また、フィラリア予防をしていない犬が増えると、フィラリアをもつ蚊が増えてしまうかもしれません。
現在ではだいぶ少ないと思いますが、私自身1年に1回はフィラリア症で亡くなる犬をみています。
フィラリアは予防できるものなので、毎年検査を受けて、正しい期間予防しましょうね。
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