こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
さて、今日は猫のおしっこに関する話。
猫は犬に比べておしっこのトラブルが多いんです!
おしっこに血が混じっている、おしっこの回数が多い…などなど。
放っておくと命に関わる危険なものもあるんですよ。
猫を飼うならぜひ知っておいてほしいおしっこトラブルについて解説します。
猫の下部尿路疾患とは?
膀胱から尿道の出口までを下部尿路と呼びますが、ここに起こる病気を総称して下部尿路疾患といいます。
膀胱炎や尿路結石、細菌性尿路感染、腫瘍などによって引き起こされる症状(頻尿や血尿、排尿困難)をまとめたもので、特定の病名を指しているものではありません。
下部尿路疾患の症状はさまざま
猫の下部尿路疾患の症状にはどんなものがあるでしょう?
- 尿に血が混じる
- 頻尿
- 少しづつしか尿が出ない(尿が出にくい)
- トイレ以外で尿を漏らしてしまう
- 排尿時に痛みがある
- 尿が全く出ない
わかりやすい症状としては、何度もトイレを出たり入ったりします。
便秘かな?と勘違いしてしまう方も多いのでよーく観察してみましょう。
多頭飼いしていると、どの子がどれぐらいおしっこをしているのかちゃんと把握できていない飼い主さんもいるので、トイレを出たり入ったりという行動に気付くのがポイントですね。
とくに最後の2つ、排尿時に痛みがある(ニャーと鳴きながらおしっこするとか)、トイレに長時間こもるけど尿が全く出ないという症状がみられたら緊急事態です!
完全に尿が出なくなって24時間以上経過すると、食欲不振や嘔吐、元気消失といった症状が出てきて、明らかに調子が悪くなってきます。
48時間以上尿が出ないと命の危険性も出てきます。
なのでこれらの症状に少しでも早く気付くことが大切です。
下部尿路疾患にはどんなものがあるのか?
下部尿路疾患には以下のようなものがあります。
- 特発性膀胱炎
- 尿路結石症(尿石症)
- 尿道栓子による尿道閉塞
- 尿路感染症
それぞれの割合は以下のとおり。(文献によって多少差があります。)
猫の下部尿路疾患のうち最も多い60〜70%を占めるのが特発性膀胱炎。
つまり原因不明の膀胱炎ということです。
そして、尿路結石、尿道栓子、尿路感染症と続きます。
これを見ると、下部尿路疾患のなかで明らかに原因が特定できるものは意外と少なく、全体の30〜40%に過ぎないということがわかりますね。
半分以上が原因不明なんだね。
下部尿路疾患は冬に多い!
冬になると運動量が減り、また水を飲む量が減ることによって下部尿路疾患が起こりやすい季節となります。
下部尿路疾患の診断方法は?
尿の異常が見られる場合には、まず尿検査が必要です。
尿検査をすることで
- 血尿が出ているか
- 尿に結石の元となる結晶があるか
- 細菌が認められるか
- pH(酸性orアルカリ性)がどれぐらいか
などがわかります。
その他に血液検査やレントゲン検査、超音波検査をおこなって全身状態を確認します。
猫の下部尿路疾患の中でもとくに発生の多い特発性膀胱炎についてみていきましょう。
猫では特発性膀胱炎が多い
今説明したように特発性膀胱炎とは、膀胱が細菌に感染したわけでも、膀胱に結石ができているわけでも、腫瘍ができているわけでもない、つまり原因がよくわからない膀胱炎です。
再発を繰り返すことも多いです。
どんな猫に発生が多いの?
年齢に関して言うとさまざまな報告がありますが、若齢〜中年齢での発症が多く、8歳以降の高齢になると発症は減っていく傾向にあります。
また、避妊去勢をした肥満の猫に多いとの報告もあります。
そして何より重要な要因が、環境中のストレス。
- 同居動物によるストレス
- 家族の留守や来客
- 気候の変化
- 運動不足
- トイレの位置や数、トイレ砂の種類の変化
- 食事の変化
- 入院や手術のストレス
など、猫は非常にストレスを感じやすい動物で、これが膀胱炎の発症原因になっていると考えられています。
どのような治療(管理)をするの?
猫の特発膀胱炎に対しては、治療、再発予防の両方で以下のようなことが大切です。
- 環境改善
- 食餌(栄養)管理
- ダイエット
がメインの治療(管理)方法となります。
重症化しており、命の危険性もある場合には数日入院することもあります。
環境の改善
ストレスが原因となることが多いとお話ししましたが、まず、環境を見直してみましょう。
環境改善ってなに?って感じですが、主にトイレです。
みなさんどんなトイレを用意していますか?
まずトイレの数ですが、猫の数+1は最低必要。そして十分な大きさ(猫の体の1.5倍ぐらい)があり、トイレ砂は細かいものを好む猫が多いようです。
しかし、この辺は好みが分かれるかもしれません…
一番大事なのは、清潔であること!
猫ちゃんはキレイ好き。
トイレにうんちやおしっこが残ったままだったり、くさーいトイレだと我慢してしまうこともあります。
またトイレの数を増やしたり、場所を変えたりしておしっこを我慢させないよう工夫しましょう。
他にもストレス発散のために猫の隠れ場所(くつろげるスペース)を作ることや、キャットタワーやおもちゃを与えて適度な運動をさせることも有効です。
食事(栄養)管理
環境の改善と並んで重要なのが食事管理。
食事管理の目的としては、
- 尿量の増加
- 結晶成分(マグネシウムやリンなどのミネラル)を減らすこと
- 尿pHを適切に保つこと
が挙げられます。
特発性膀胱炎の猫は濃い尿を排泄しますが、尿が濃いと結晶成分が沈殿しやすくなったり、膀胱粘膜をさらに刺激することになるので、これらを防ぐために尿量を増やすことが重要です。
実は、尿のpHを適切に保つことやミネラル成分を減らすことが特発性膀胱炎に有効かどうかはわかっていないのですが、結石により尿道閉塞を併発してしまうと命に関わる危険な状態になることもあり、結晶成分を制限することは重要な予防法であると思います。
特発性膀胱炎を含む下部尿路疾患に対応したフードはメーカー各社から販売されていますよね。
下部尿路疾患用フードの中には抗ストレス効果、抗不安作用があるとされるL-トリプトファンやα-カソゼピンが含まれているものがあります。
これらの精神安定作用や鎮静作用は、犬や猫で効果が証明されていて、ストレス軽減に役立っています。
とはいえ、フードを急に変更するとそれがまたストレスになる可能性もあるので、1週間ほどかけて徐々に変更しましょう!
これらのフードは療法食です。自己判断ではなく、必ず獣医師の指導のもと与えるようにしてください。
尿量を増やすために、いつでも新鮮な水をたっぷり飲めるようにしておくことも重要です。
猫は尿トラブルが多い!日頃から尿の様子や変化を観察しよう!
猫は犬に比べると排尿トラブルが多いです。
尿トラブルのちょっとしたサインを見逃してしまうと命に関わることもあります。
日頃からおしっこの色や量などを観察することも重要ですが、それと同時に食事管理やストレスが少なくなるような環境をつくり、下部尿路疾患のリスクを少しでも抑えることも大事ですね。
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