こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
マダニってどこにいるの?都会にはいないよね?
マダニに刺されるとどんな症状が出るの?
散歩から帰ってきたらマダニがついてたけど、取ってもいいのかな
マダニ、最近よく耳にしますよね。死亡例も増えています。
でもマダニがどこにいるのか、刺されるとどんな症状が出るのか、対処法はあるのかについて知らない人は多いと思います。
今日はマダニとはどんな生き物か、犬や猫が刺されるとどのような病気や感染症のリスクがあるのかについてお話しします。
マダニとは?
マダニは節足動物の仲間ですが、翅がない、肢が8本あるなど、分類上はクモに近い生き物です。
- 世界で800以上の種類がおり、日本には47種類が生息
- 成虫は体長3〜8㎜だが、飽血(最大限に吸血した状態)すると、1〜2㎝になる
- 頭・胸・腹の区別がなく、胴体の先に口器がついている
- 脚は幼虫6本、成虫8本あり、昆虫ではない(ノミは昆虫)
- 幼ダニ、若ダニ、成ダニすべて吸血する
ちなみにオスとメスの形態が違っており、これを雌雄異体といいます。
マダニは初夏から秋(気温13度以上)にかけて盛んに吸血活動をしていて、冬になると落ち葉の下などで休眠しています。
マダニは、いわゆる”ダニ”とは違う!
マダニってふとんとかクローゼットの衣類にいるあのダニと同じじゃないの?
それはいわゆる屋内ダニ。マダニは通常、屋外にいるんです。
よく勘違いされますが、マダニと屋内ダニは全く異なります!
一般的にダニは、室内に生息する屋内ダニ、屋外に生息する屋外ダニに分けられます。
屋内ダニは、布団やカーペットなどの布製品、粉物などの貯蔵食品に生息しています。
小麦粉やお好み焼き粉を封切って常温に出しっぱなしにしておくのは危険ですよ!ダニが繁殖してしまうので冷蔵庫で保管しましょう。
屋内ダニのほとんどは体長0.2〜0.4㎜程度で、肉眼ではほとんどみえません。
マダニは屋外に生息している
一方、屋外ダニは屋外に生息していて、マダニは屋外ダニに分類されます。
肉眼でもみえる大型のダニで、マダニのほかにもイエダニやトリサシダニがいます。
屋外ダニは水や土、草むら、動物に生息しています。
マダニには、フタトゲチマダニ、クリイロコイタマダニ、キチマダニ、ヤマトマダニなどがいますが、それぞれ適した環境や地域が異なります。
マダニは季節に関係なく、環境に適したダニが、都市部、山間部、日本全国あらゆるところに生息しているということです。
マダニの生活環(ライフサイクル)は?
マダニは動物への寄生→吸血→落下を繰り返しながら、卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長します。
幼ダニ、若ダニ、成ダニすべて吸血します。
動物の体で吸血する時期と地面(草むら)に落ちている時期があるのね。
おうちのわんちゃんの散歩コースを思い出してみましょう。
- 公園(とくに緑の多い公園)
- 河川敷
- 山、畑
- 田んぼのあぜ道
こんなところはありませんか?
マダニは緑の多いところで、つねに動物に寄生するチャンスをうかがっています。
こうやってみるとマダニは田舎に多いと思われがちですが、もちろん都市部にも生息しているので注意しなくてはいけません。
犬の場合、被毛の薄いところや目、耳、鼻、指にくっついていることが多いです。
散歩のあとはチェックしてみましょう。
マダニに刺されることによる直接的な被害とは?
ところで、マダニってなんで危険なの?
マダニがいろんな病気を運んだり、犬だけではなくて人への被害もあるからなんだ。命に関わることもあるんだよ。
マダニの何が危険かというと、マダニが寄生することによる直接的な被害のほかに、あらゆる感染症を媒介するということです。
- 貧血…マダニに大量に寄生されて吸血されると、貧血を起こす
- アレルギー性皮膚炎…マダニの唾液がアレルゲンとなって、かゆみを引き起こす
- ダニ麻痺症…マダニのなかには、吸血するときに神経毒を動物の体内に注入するものがいて、この神経毒によって筋肉が麻痺してしまう
などがあります。
マダニが媒介する犬の病気とは?
マダニはあらゆる病原体を媒介、つまり感染症を媒介します。
これがマダニを予防すべき理由です。
マダニが媒介する犬の感染症ってなんだろう?
- バベシア症
- ライム病
- Q熱
- エールリヒア症
- へパトゾーン症
この中で最も重要なのがバベシア症です。
犬バベシア症
以前は、バベシア症は西日本(紀伊半島より西)に発生が多いといわれてきましたが、東日本での発生も増えてきています。
バベシアは原虫の一種で、普段はマダニの中に潜んでいますが、マダニが犬を吸血したときにバベシアが犬に感染します。
一般的に、感染してから2〜3週間で症状が現れます。
バベシアは血液中の赤血球に感染して、赤血球を破壊することで溶血性貧血を引き起こします。
そのほかにも食欲不振や発熱、黄疸などがみられ、治療が遅れると死に至ることもあります。
バベシア症のやっかいなところは、再発が多いということ。症状がよくなっても、体内にバベシアが潜伏していることもあり、ストレスや免疫低下により再発することがあります。
ライム病
スピロヘータ科ボレリア属の細菌が原因となる人獣共通感染症。
犬では無症状のことが多いですが、関節炎、発熱、食欲不振、けいれんがみられることがあります。
エールリヒア症
エールリヒア属の細菌が原因となる人獣共通感染症。
犬では8〜20日間の潜伏期間のあとに、発熱、鼻汁、食欲不振、貧血がみられます。
マダニが媒介する猫の病気とは?
マダニが媒介する猫の病気ってあるのかな?
あまり知られていませんが、猫にもマダニは寄生するし、マダニが媒介する病気もあります。
猫ヘモプラズマ症
Q熱
ヘモプラズマ症
ヘモプラズマというリケッチア(細胞内寄生体)が猫の赤血球に寄生することで赤血球が破壊され、溶血性貧血が起こります。
マダニによる媒介のほかに、猫同士のけんかによる咬傷、母子感染が考えられますが、いまだに明らかになっていません。
症状として、発熱や元気消失、食欲不振、黄疸、血色素尿などがみられます。
Q熱
コクシエラバーネッティというリケッチアによって起こる病気で、猫が感染してもほとんど症状は示しません。(不顕性感染)
しかし、胎盤で大量に増殖するため、感染している猫が出産や流産をするときに人に感染する可能性があります。
保菌動物の羊水や糞尿で汚染された乾燥粉塵を吸入する経気道感染が知られています。
マダニから犬や猫を守るにはどうしたらいい?
マダニは犬や猫にあらゆる感染症を媒介し、さらに、人の生活環境内に持ち込むこともあるので、ぜひ対策をしておきたいですよね。
マダニが動物の体に付着しないようにすることはできないので、マダニに吸血される前に駆除できるように予防しておくことが何よりも重要です。
そのためには、定期的にマダニ予防薬を投与することが重要です。
人がマダニから身を守るためにはどうすればいいのかな?
散歩の時や山へ入る時は露出の少ない服装で行動し、虫除けスプレーもしておくとよいでしょう。
マダニが犬の体についていたら取ってもいい?
これもよく聞かれる質問です。
答えは「ノー」です。
吸血中のマダニは皮膚にしっかりくっついているため、無理に取ろうとすると口先だけ皮膚に残って化膿するおそれがあります。
飼い主さん自身の判断で取らないようにしましょう。
ねじって取ったり、つぶしたりするのもダメですよ!
動物病院でピンセットで取ってもらうか、駆虫薬を処方してもらいましょう。
まとめ:マダニは意外と身近にいます!マダニによる犬や猫の感染症も多い!
- マダニは犬や猫に感染症を媒介する
- 定期的にマダニ予防薬を投与
- 散歩のあとは、耳、目、鼻、被毛の薄いところにマダニがついていないかチェック
- 散歩コースに草むらや公園、川、山がある場合は、人も長袖・長ズボンを着用
- マダニがくっついてもむりやり取らない
「うちは都会だしマダニはいないよね」
「うちのわんこは散歩に行かないから大丈夫」
そんなことはありません。
都市部でも公園や川の近くにマダニは生息していますし、人がマダニを家に持ち帰ってくることもあります。
犬や猫がマダニに吸血された場合、どのような害があるのか、どのような感染症のリスクがあるのか、ぜひ知っておいてほしいと思います。
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