ハリネズミのフケの原因は?ダニ?カビ?

こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。

今日は「ハリネズミの皮膚病」についてのお話。

ハリネズミの皮膚の症状で多いのがフケかゆみ

実はその原因のほとんどがダニ

またカビ(真菌)によるものも多いです。

今日は、ハリネズミに多くみられるフケかゆみ針が抜けるといった症状の原因を解説します。

目次

ハリネズミのヒゼンダニ(疥癬)とは?

ヒゼンダニは、購入直後の若いハリネズミで問題となることが多いです。

ヒゼンダニの生態

ヒゼンダニは皮膚の中にもぐりこみ、トンネルをほって産卵します。(疥癬トンネル)

その卵がふ化して、成虫になってまた産卵し・・・を繰り返します。

10〜14日でこのサイクルを繰り返して寄生しています。

ヒゼンダニは動物の体温が生活に適していて、動物から離れると長く生きられません

疥癬は人獣共通感染症であり、実際にハリネズミから飼い主へ感染した例も報告されています。

ハリネズミ同士が直接接触することで感染するので、繁殖場での感染、同居のハリネズミからの感染が考えられます。

床材や巣箱を介して間接的に感染する場合もあります。

疥癬の症状

ハリネズミは丸まっていることが多く、

「皮膚なんてみえない!」

と思うかもしれませんが、透明のプラスチックケースに入れてみてみましょう。

  • 顔周り
  • 針の間

このあたりをよく観察してみてください。

  • フケ
  • かさぶた
  • 針が抜ける
  • かゆみ

ヒゼンダニは、猫を好むヒゼンダニ、ウサギを好むヒゼンダニなど、寄生に適した宿主が決まっています。(宿主特異性が高い)

本来寄生すべき動物に寄生すると、産卵してどんどん増えることによって宿主に症状を引き起こします。

しかし、本来寄生しない動物に寄生した場合(例:ハリネズミのヒゼンダニが人に寄生した場合)は、産卵して増えることができないので、そんなに強い症状は出ません。

出たとしても小さな湿疹程度で、すぐに治ります。

寄生数が少ないと何の症状も出ないことがあります。

夜行性の動物なので、症状に気づかないことも多いようです。

なかなか治らず、治療が長引く場合、免疫力が下がっている可能性があります。この場合、皮膚症状以外にも食欲低下や体重減少がみられることがあり、投薬がむずかしくなります。嗜好性の高いフードを与える、投薬方法を変えるなどの工夫が必要になります。

疥癬の診断

まずはフケを採取。

体からセロハンテープでフケを取って顕微鏡で観察します。(テープ検査)

落ちているフケでもオーケー。

顕微鏡でみると・・・

ヒゼンダニ

かゆみなどの症状がある場合は寄生数が多いので簡単に確認できます。

疥癬の治療

セラメクチン

セラメクチン(商品名:レボリューション)を2〜4週間に1回滴下。

1回では駆除できないので、3〜4回繰り返し投与します。

ハリネズミは唾液塗り(ヨダレつけ、アンティング)をするので、なめられない場所に滴下する

イベルメクチン

イベルメクチンを10〜14日に1回、皮下注射または経口投与します。

こちらも1回では駆除できないので、3〜5回繰り返し投与します。

同居のハリネズミがいる場合は同時に治療しましょう。床材や巣箱を頻繁に交換して、衛生的な環境を保つことも重要です!

ハリネズミのヒゼンダニ:症例紹介

下の写真は後ろ足で首あたりをずっとかいているという症状で来院したハリネズミ。

かゆみがあるハリネズミ
皮膚が赤いハリネズミ

ちょっとわかりにくいですが、顔から首、胸にかけてフケが多く、皮膚が赤くなっていました。

そして背中の針の間には少し大きめのフケがたくさんあり、ところどころ針が抜け落ちていました。

さっそくフケをセロハンテープで取って、顕微鏡で観察。

フケを顕微鏡でみるとこんな感じ。

ハリネズミのヒゼンダニ

いましたよ、ヒゼンダニ。

レボリューションで治療して2ヶ月後にはすっかりよくなりました。

フケがなくなり、針も生えてきたハリネズミ

ヒゼンダニ以外にもダニはいる

ヒゼンダニのほかにも、ハリネズミに寄生するダニがいます。

ミミダニ

ミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)は猫との接触で感染し、外耳炎を起こすことがあります。

ニキビダニ

免疫力が低下した動物で増殖し、かさぶたなどの皮膚症状が出ます。

マダニ

マダニはペットのハリネズミにはあまりみられませんが、耳の周りや後ろ足、おなかに寄生することがあります。

かゆみや貧血がみられます。

ハリネズミのカビ(皮膚糸状菌症)

ヒゼンダニと同じぐらいよくみる皮膚疾患です。

疥癬と同じようにフケ、脱針、かゆみがみられるので、見た目だけでは判断できません。

厳密にはフケの出方が異なり、真菌の場合は、フケの量が多いという報告もあります。

テープ検査と同時に真菌培養をして、真菌との鑑別をしておく必要があります。

真菌培養も必要

針を何本か抜いて培養キットで培養し、10〜14日後に変化がみられたら陽性!ってやつですね。

真菌陽性であれば、抗真菌薬を開始します。

真菌とダニが同時に感染していることも多く、その場合は治療が長くなります。

まとめ:ハリネズミの皮膚疾患は比較的多い!こまめに皮膚をチェックしよう!

フケなどの皮膚症状で来院するハリネズミは比較的多いです。

ハリネズミは夜行性ということもあり、その症状に気づきにくいかもしれません。

原因はいくつかありますが、ヒゼンダニの場合は駆虫さえできれば比較的予後はいいです。

ペットショップやブリーダーのところでダニの駆虫をしてから販売することは少ないので、お家に迎えたらまずは動物病院で検査をうけましょう。

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