こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
この間、久しぶりに犬のハジラミをみました。
猫は野良の子が多いからか、猫のハジラミはよくみるんですが、犬では久しぶりでした。
今日は、犬にハジラミ症についてお話ししたいと思います。
犬のハジラミの特徴は?
犬でみられるハジラミはイヌハジラミ(Trichodectes canis)です。
- 昆虫の一種で、足は6本
- 体長約1㎜で、肉眼でもみえる
- メスは1日3〜10個の卵を産む
- 虫体も卵も毛に強く接着して、簡単には取れない
- 皮膚の表面でフケや毛、皮脂を食べる
- 吸血しない
- 宿主特異性が強く、犬以外へは感染しない
よく混同されますが、「イヌジラミ」とは別物。イヌジラミは、犬の皮膚の表面に細い口を刺して吸血します。
ハジラミはよくみるんですが、シラミはそんなに多くないように思います。
イヌハジラミの感染経路は?
イヌハジラミは宿主特異性が強く、犬以外の動物には寄生しません。
そして、全生涯を犬の体表で過ごすので、犬から離れると長くは生きられません。
ということは、ハジラミに感染した犬と接触することによって直接感染するんですね。
感染した犬が使っていたケージやタオルからもうつることがあるので気をつけましょう。
ペットショップやブリーダーなど繁殖施設で多いようです。
イヌハジラミによる症状とは?
直接的な害
イヌハジラミは吸血しませんが、犬の体の表面を活発に移動することでかゆみが出ます。(そんなに強いかゆみではありません)
そのほかにもフケや脱毛がみられます。
間接的な害
イヌハジラミは瓜実条虫をもっていることがあります。
誤って犬がハジラミを口にしてしまうと、瓜実条虫に感染してしまいます。
イヌハジラミが瓜実条虫の運び屋(中間宿主といいます)になってしまうんですね。
感染しても無症状のことが多いですが、たくさん寄生すると下痢を起こしてしまいます。
瓜実条虫症は人獣共通感染症です!犬への口移しや過度なスキンシップによって人にもうつるので気をつけましょう。
ちなみに、瓜実条虫はノミによっても媒介されますよ。
犬のハジラミ症の症例紹介
それでは実際に症例をみていきましょう〜。
今回は、ペットショップから家に迎えたばかりの生後4ヶ月のダックスフンド。
初めての健康診断でした。
おうちでは元気に過ごしていて、とくに気になることもないそうです。
診察をはじめると、さっそく背中に何かを発見。
首から腰を毛をかきわけてみると、白いフケのようなものがたくさんみえました。
もう少し拡大すると…
なにかの卵かな?
肉眼だけではただのフケなのか、卵なのかはわかりません。
一応セロテープでこの部分をペタペタ採取。
そして、もう少し全体の毛を観察してみました。
すると別のところには…
いました。ハジラミの成虫。
クリーム〜茶色っぽい色をしていて、ゆっくり動いてました。
ハジラミの成虫は肉眼でもわかります。
この部分もセロテープでペタペタ採取。
そして顕微鏡でみると…
きれいにみえますね。
ハジラミは毛に卵を産みますが、虫体も卵も毛に強く接着しているのでなかなかとれません。
(ハジラミの卵は写真に撮り忘れてました泣)
ハジラミの治療法・予防法は?
- 駆虫薬
- シャンプー
この2つが重要。
駆虫薬は、フィプロニル製剤やセラメクチン製剤などを使います。
そして、シャンプー。
シャンプーの種類は普段使っているものでかまいません。
しかし、ハジラミと卵は毛に強く接着しているのでシャンプーやコームでは簡単に取ることができません。
何回かシャンプーをするか、できれば全身の毛を刈ってしまうのがいいかもしれません。
また、ケージやベッドを熱湯消毒しましょう。
まとめ
犬のハジラミは頻繁に出くわすわけではないのですが、ペットショップから迎えたばかりだったり、ほかの犬と接触する機会が多い子は要注意です。
かゆみもそんなに強くなく、パッとみるとフケのようにみえるので飼い主さんも気付きにくいかと思います。
少しでも気になったら動物病院で検査をしてもらいましょうね。
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