最近鼻水とくしゃみがひどくて、今日病院に行ったら、スナッフルって診断されたの。
大丈夫?ところで、正確にはスナッフルというのは病名ではないんだよ。
そうなの?!どういうこと?
こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
今日はウサギの鼻水・くしゃみの原因やその対処法について解説します!
ウサギの鼻水・くしゃみ=スナッフル?
お家のうさぎが鼻水・くしゃみの症状があり、病院へ連れていくと「スナッフル」といわれたことはありませんか?
スナッフルとは、「鼻水がでる」「鼻がつまる」「鼻をフンフンいわせる」という意味。
weblio英和辞典
もともとスナッフルというのは症状や仕草のことを表しているんですね。
ウサギは、鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患にかかることがあります。
このときにみられる鼻水、鼻づまり、くしゃみなど鼻炎の症状を総称してスナッフルといいます。
病名ではありません。症状です。
初期では、さらっとした水溶性の鼻水がみられます。
慢性化、重症化するとネバっとした白〜黄色の鼻水に変化します。
また、ズーズーという呼吸音が聞こえることがあり、これをスナッフリングノイズといいます。
初期のうちは見逃しやすいですが、前肢で鼻をこすり、鼻周りがガサガサになることもあるので、このようなサインを見逃さないように日頃からチェックしたいですね。
ウサギのスナッフルの原因は?
スナッフルの主な原因は細菌感染です。
- パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)
- 仮性結核菌(Pasteurella pseudotuberculosis)
- 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
- 気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
パスツレラ菌はウサギの鼻腔に存在する常在菌として有名だね!
スナッフルはパスツレラ菌が原因とされていることが多いですが、実際には複数の細菌が混合感染しています。
そして、これらの菌を保有しているだけでは症状は出ません。
季節の変わり目・環境の変化・温度・湿度・栄養不良などのストレスが加わると、これらの細菌が悪さをしてスナッフルを発症します。
鼻水・くしゃみ→病名はスナッフル→原因はパスツレラ
と説明する獣医師がいますが、そうではありません。
鼻水・くしゃみ→病名はスナッフル→原因はパスツレラ、ではありません。スナッフルというのはあくまでも一症状であり、原因は多岐にわたります。
細菌感染のほかにも、スナッフルの原因となるものをいくつかあげてみます。
- 尿の成分であるアンモニアの鼻腔への刺激
- タバコの煙、アロマなどの鼻腔への刺激
- 鼻腔内異物(床敷の木製チップや牧草の粉など)
- 急激な温度変化
- 空気の乾燥
- 歯牙疾患(不正咬合)
- 下部呼吸器疾患(気管支炎、肺炎)
- 循環器疾患
このなかで重要なのが歯牙疾患。
鼻腔の下には臼歯(奥歯)があります。
臼歯の不正咬合によって歯の根っこ(根尖といいます)が伸びると、鼻腔に影響してスナッフルの原因となります。
不正咬合が原因のスナッフルは非常に多いです。
歯のチェックは病院で定期的にしてもらいましょう!
ウサギのスナッフルの診断法は?
問診
まずは、普段の生活の中で原因となるようなことがないか、詳しく問診をしていきます。
元気・食欲があるか、きちんと排便があるかも重要なポイントだよ!
視診・触診
口の中をよくみて、歯(とくに臼歯)が伸びすぎていないか確認します。
切歯(前歯)は無麻酔でも確認できますが、臼歯(奥歯)をしっかり確認するには麻酔が必要なことがあります。
検査
レントゲンで臼歯の咬合、歯根の状態を確認します。
同時に鼻腔の骨や軟骨の状態、また、肺炎になっていないかも確認できます。
レントゲンもウサギにとってストレスとなります。骨折などの事故もおこりうるので、注意が必要。
あとは、鼻水を採取し、細菌培養をして原因菌を検出する場合もあります。
ウサギのスナッフルの治療法はある?治るの?
症状に合わせて対症療法を行います。
主に抗生剤の投与が行われますが、抗炎症剤や抗ヒスタミン剤、鼻水を溶かす粘液溶解剤を併用することもあります。
ウサギには投与してはいけない抗生剤があるので注意が必要です。細菌培養検査を行うことによって、効果のある抗生剤を選択できます。
食欲が低下するウサギもいるため、皮下補液をすることもあります。
ネブライザーも有効な治療法。
抗生剤や粘液溶解剤を含んだ霧で満たしたボックスにウサギを入れ、薬剤を吸入させる方法です。
ウサギは基本的に鼻呼吸なので、この霧はすべて鼻腔を通過します。
治療においてやっかいなのが、ウサギの鼻腔の軟骨は迷路のような複雑な構造しているということ。
ここに細菌が入り込むので、薬剤が届きにくいんです。
薬を飲んでいても治りにくいということね!
また、ウサギの多くはパスツレラ菌を元々もっているため、ストレスや免疫力低下による再発が多いです。
したがって、完治は難しく、生涯にわたって付き合っていく必要があります。
ウサギのスナッフルの予防法・対策法はある?
完治は望めないものの、発症させないための予防・対策法はあります。
スナッフルはストレスや免疫力低下が原因となるため、まずは環境を見直しましょう。
- 温度・湿度を一定に保つ(室温23〜25℃、湿度50〜60%)
- 空気を適度に入れ替える
- 牧草・糞尿などの粉が舞わないようにこまめに掃除
- 床敷は牧草が理想的だが、衛生面を考えて、すのこでもOK
- タバコ、アロマなど鼻への刺激となるものを除去
- 食事内容を変更する場合は一週間ほどかけてゆっくり行う
- 定期的に歯のチェック
チップの素材を変えてみたり、トイレのそうじをこまめにするだけで、結構症状は改善されますよ。
改善できるところはしてみましょう!
歯のチェックも重要。
お家ではなかなかできないので、病院で定期的に歯をみてもらいましょう。
早めに対処することができます。
また、くしゃみや鼻水を介して他のうさぎに感染するため、多頭飼いしている場合は接触させないようにしましょう。
たかが鼻水、くしゃみとほったらかしにしていたら重症化してしまい、治りにくくなります。
パスツレラ菌は人獣共通感染症で、動物に咬まれることで感染します。
ウサギが人を咬むことはあまりなく、うさぎから人への感染はあまり報告されていません。
しかし、傷口のある手指でスナッフルの症状があるウサギを触るのは避けましょう。
また、免疫力の弱い子供やお年寄りの方は感染の可能性もあるので、手洗い消毒をしっかり行い、十分注意しましょう。
まとめ:ウサギの鼻水・くしゃみの原因は多岐にわたる。まずは環境を見なおそう!
ウサギの鼻水・くしゃみはよくみられる症状で、病院にもたくさんの患者さんが来られます。
鼻水・くしゃみの原因はいくつか考えられますが、まずはお家の生活環境を見なおしてみることが重要。
スナッフルの原因の多くはパスツレラ菌であり、多くの健康なウサギが元々もっている細菌です。
再発を繰り返し、完治は難しいということを理解した上で上手に付き合っていくことが必要です。
食欲不振の原因にもなるので、まずは病院で相談してみましょう。
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