共同獣医ってなに?獣医大学同士の連携?その仕組みとメリットを考えてみた

こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。

獣医師を目指している受験生のみなさんは、「共同獣医」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

私は大学5、6年生のときにはじめて「共同獣医」という言葉を聞きました。

「共同獣医」とはなんぞや?!

ということで、今日は共同獣医について解説したいと思います。

目次

全国にある17の獣医大学を紹介!

国立10校

  • 北海道大学
  • 帯広畜産大学
  • 岩手大学
  • 東京大学
  • 東京農工大学
  • 岐阜大学
  • 鳥取大学
  • 山口大学
  • 宮崎大学
  • 鹿児島大学

公立1校

  • 大阪府立大学

私立6校

  • 酪農学園大学
  • 北里大学
  • 麻布大学
  • 日本大学
  • 日本獣医畜産大学
  • 岡山理科大学

これまでは、1つの大学に入学し、その大学の講義や実習を受けて、単位を取得して卒業していました。あたりまえですね。

共同獣医学部・学科、設置された背景とは?

まず、共同獣医学部・学科とは、

2つの獣医系大学が連携し、それぞれの教員や施設、得意分野を共有することで補い合い、さらなる獣医学教育の発展を目指すための仕組みのこと

日本の獣医学教育水準は世界に比べるとまだまだ低く、教員数や施設も乏しい状況です。

とくに国公立大学は定員数が少なく(国立325人、公立40人、私立560人)、学生一人に対する専任教員の数も少ないです。

国公立では学生1人に対して教員が約1人、私立では学生1人に対して約2.2人といわれています。

これに対して国際レベルでは、学生60人に対して教員72人が基準となっています。

国公立大学で教員を70人ほど確保するには、2大学を共同学部とするのが現実的と考えられたんですね。

さらに、これまでは大学独自で獣医学教育をおこなってきましたが、それを国際基準の教育に押し上げようと思っても、国公立大学単独ではやはり限界があります。

以前から、欧米での獣医療の高度化にともない、日本でも国際化に対応すべく、獣医大学のあり方が文部科学省のもとで議論されてきました。

このような経緯から、2009年ごろから、共同獣医学部を設置したらどうかという案が出てきて、パートナー選びも始まったのです。

2つの大学がそれぞれの教育資源を結集して、これまで1大学だけでは成しえなかった獣医学教育をおこない、国際的に通用する獣医師を育成しようとするのが目的です。

  • 各大学の特色ある教育資源(教員や施設)を共有する
  • 講義内容や単位数ともに世界に通じるものにする
  • 高度化・専門化する欧米の獣医学教育への追随
  • 産業動物・公衆衛生分野の教育強化・効率化

共同獣医の設置にはこのような目的やメリットがあるということですね。

共同獣医とは直接関係ないですが、文部科学省から、1つの国立大学法人のもとで複数の大学の学部を集約し、予算や設備、人員を学部ごとに集中させて教育の質を高める方針が出されました。

共同獣医学部を設置している大学は?

共同獣医学部を設置している大学は以下のとおりです。

  • 北海道大学と帯広畜産大学
  • 岩手大学と東京農工大学
  • 岐阜大学と鳥取大学
  • 山口大学と鹿児島大学
  • 東京大学と宮崎大学
  • 大阪府立大学と宮崎大学

国公立大学同士が連携を結んでいることになります。

日本初の共同獣医学部が設置されたのが山口大学と鹿児島大学です。

連携を結ぶにあたっては、

  • 大学間の距離(移動しやすいか)
  • 自大学にない強みを相手がもっているか

など、お互いにメリットが生まれる相手を選んだようです。

現在のところ、共同獣医学部が設置されるのは国公立大学だけですが、51の専門科目が課される「共用試験」への対応として、私立大学でも共同獣医の設置の話は出てくるかもしれません

共同獣医学部の受験はどう変わる?

今まで1つの大学を受験して、その大学へ入学するのが普通でしたね。

共同獣医学部の場合、どちらか一方の入学試験を受験して、合格通知をもらいます。

入学後は、連携している2大学に在籍することになります。

ただ、「本籍」というのがあって、入学試験を受けた大学が本籍となります。

入学料や授業料も本籍のある大学へおさめます。

なので、本籍を置くことを希望する大学の入学試験を受けましょう

入学後は、共通のカリキュラムのもとに講義や実習を受けます。

試験も共通です。

そして卒業時には、両大学連名の学位が授与されます。

授業の形式はどうなる?

  • 遠隔システム

インターネットを利用した遠隔システムで、2大学の学生が同時に授業を受けます。

大学同士の距離が離れているのでこの方法が導入されています。

私も一度この形式で授業を受けましたが、まだ導入さればかりということもあって、なかなか大変でした。

途中で接続が切れてしまったり、目の前にいる先生が画面に話しかけて授業をしていたりするので、変な感じでした。

  • 教員または学生が移動

それぞれの大学間を学生が移動して講義を受けたり、逆に教授が移動して講義をします。

臨床の実習が3年生から始まりますが、夏休みなど長期休みを利用して学生が泊りがけでもう一方の大学へ行って実習を受けます。

もちろん費用は、学生負担がゼロになるように調整しています。

まとめ:国公立大学の共同獣医学部はまだ始まったばかり!これからの獣医学教育に期待!

私が学生のころは、共同獣医学部としての講義が導入されたばかりでした。

学生も教授も手探り状態で、後輩たちは大変になりそうだなと思いながら卒業しました。

しかし、日本の獣医学教育は欧米から遅れをとるばかり。

このような方針は獣医学教育のレベルを上げるのに必要なステップだと思います。

まだ問題点がたくさんあるかとは思いますが、これからどのような獣医師が出てくるのか楽しみですね。

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