こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
春になりましたね〜。
桜もきれいですが、ノミが活発になる時期でもあります。
犬や猫を飼っているみなさん、ノミの予防しっかりしていますか?
うちはほとんど散歩には連れて行かないし、ノミ予防は必要ないかな。
散歩に行かない子でもノミ予防はしておいた方がいいですよ。
今日は、ノミ予防について解説します。
ノミの生態について知ろう
まず、ノミの特徴から解説します。
- 羽をもたない小型の吸血昆虫
- 世界中に1000種以上いる
- 後ろ足が発達しており、跳びながら移動する
- 気温13℃以上で活発化する
- 日本では主に、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ネコノミ(C. felis)、ヒトノミ(Pulex irritans)が知られている
- 宿主特異性が弱い(ネコノミが猫以外にも犬や人にも寄生する)
- 日本では犬・猫に寄生するのはネコノミが大多数で、イヌノミは少ない
- ヒトノミは日本ではほとんどみられない
ノミ寄生の問題1.ノミアレルギー性皮膚炎
まず、ノミによる直接的な害として、
- ノミにさされたことによるかゆみ
- ノミに吸血されたことによる貧血
- ノミに吸血されたときの唾液に対するアレルギー
がありますが、問題となるのは最後のいわゆるノミアレルギー性皮膚炎です。
部位:背中、腰、後ろ足の内側、しっぽの付け根(猫は首も多い)
症状:かゆみ、自傷、脱毛、丘疹(赤いブツブツ)、紅斑(皮膚が赤く盛り上がる)、フケ
ノミアレルギー性皮膚炎の診断法は?
まずは、ノミがいることを確認。
- ノミの虫体
- ノミの糞(ノミがいなくても糞だけが皮膚についていることもある)
どちらかがあればノミがいるということ。
ノミ取り櫛を使って毛をかきわけてみましょう。
体長2㎜と非常に小さいですが、肉眼でもみえます。
ノミ自体は歩いたり跳んだりしていますが、動きがすばやいので、寄生数が少ないと見つけにくいです。
このようなときは、ノミの糞を探してみましょう。
非常に小さい(鉛筆で書いたような黒い点々)ですが、湿らせたティッシュペーパーにのせると、ノミの糞であれば赤くにじみます。
ノミがいるだけではノミアレルギー性皮膚炎とは診断できません。
アレルギー検査(皮内試験・抗体検査)をして、陽性であればノミアレルギー性皮膚炎と診断できます。
しかし、いきなりアレルギー検査をすることは少なく、まずは、ノミに対する治療をしてみて、症状が改善するかどうかをみます。
ノミ寄生の問題の2.瓜実条虫症(サナダムシ)
ノミ寄生の問題の2つ目は瓜実条虫症。こんな感じの平べったい虫ですね。
ちなみにわたしの同級生は、ダイエットのためにサナダムシをお腹の中で飼ってました!(効果があったのかどうかは不明…)
みなさんはマネしたらダメですよ!
- ノミの幼虫が瓜実条虫の卵を食べる
- 瓜実条虫の卵をもったノミが、犬や猫に寄生し、毛づくろいをしたときに口の中に入る
- 犬や猫の体内で瓜実条虫が成長する
このような流れで、犬や猫が瓜実条虫に感染します。
下痢や嘔吐の原因になります。
犬や猫にノミがついていた場合の対処法は?
皮膚のかゆみが強く、ノミアレルギー性皮膚炎が疑われる場合、以下のような方法で対処を考えます。
- 寄生しているノミの駆除
- かゆみを減らす
- 生活環境のノミの駆除
- 予防
順番にみていきましょう!
寄生しているノミの駆除
まずは、動物の体に寄生しているノミの駆除をしましょう。
- フィプロニル(商品名:フロントライン)
- アフォキソラネル(商品名:ネクスガード)
- イミダクロプリド(商品名:アドボケート)
- セラメクチン(商品名:レボリューション)
- フルララネル(商品名:ブラベクト)
- スピノサド(商品名:コンフォティス)
主なノミ駆除薬をあげてみました。
ほかにもいろいろなノミの予防薬があり、動物病院によって取り扱っているものは違いますが、主に飲み薬とスポットオンタイプ(皮膚に薬剤をたらすタイプ)になるかと思います。
以前は、飲み薬は錠剤だけでしたが、チュアブルタイプといって肉のようなおやつ感覚で食べられる薬も発売されています。
ホームセンターやペットショップでノミ取り首輪が売られていますが、ノミが近づかないようにする忌避効果が主なもので、ノミ駆除・予防効果は期待できません。
必ず動物病院へ行って診察を受けた上で、薬を処方してもらいましょう
- 成虫を駆除
- 卵の孵化を阻害
- 幼虫の脱皮・成長を阻害
薬によって多少異なりますが、このような仕組みでノミを駆除します。
かゆみを減らす
かゆみが強い場合は、ステロイド(炎症をおさえる)の内服や外用薬を使うことがあります。
また、抗菌シャンプーや止痒性シャンプーで、皮膚の洗浄・保湿をすることもかゆみをおさえるのに有効ですね。
生活環境のノミの駆除
動物の体だけでなく、家の中のしっかりノミの駆除の対策をしましょう。
ノミは外の環境、とくに草むらに多く生息していて、散歩に来た犬や猫に飛び移ります。
そのままノミを家に持ち帰ってしまうことが多いです。
そこにメスのノミがいると1日最大50個程度の卵を産み、1ヶ月後には10数万匹の幼虫が産まれることになります。
ぞっとしますね…
なので、1匹でもノミがいたら、生活環境のノミの駆除をしましょう!
ソファやベッド、カーペット、犬猫の寝床の近くなど、ノミが生活しやすい環境が、家の中にはたくさんあります。
とくに、暗くて湿度の高い場所に生息しているので、そのような場所はしっかり掃除機をかけておきましょう。
そして同時に、市販(薬局)で購入できる駆除剤でノミ駆除をしましょう。
ピレスロイド系の薬剤で、スプレータイプ、パウダータイプ、くん煙剤、蒸剤タイプがあります。
どれも臭いがほとんどなく、日常的に使いやすいです。
ノミのこと、甘くみすぎていたかもしれない…
室内飼いだから大丈夫と、ノミの予防をしていない飼い主さんはけっこう多いんです。
ノミの予防
動物や生活環境のノミの駆除をして安心してはいけません。
再発がないように、ノミの予防をしなくては意味がありません。
予防薬も、駆虫薬と同じで、
- フィプロニル(商品名:フロントライン)
- アフォキソラネル(商品名:ネクスガード)
- イミダクロプリド(商品名:アドボケート)
- セラメクチン(商品名:レボリューション)
- フルララネル(商品名:ブラベクト)
- スピノサド(商品名:コンフォティス)
を使いましょう。
よく、冬は大丈夫でしょと予防してない飼い主さんがいますが、ノミは13℃以上の環境であれば活発に動きます。
現在では室内飼いの犬や猫がほとんどなので、常にノミに接触する危険があるということです。
また、飼い主さんが外から家に持ち帰ってくることもあります。
夏だけでいいでしょ、室内飼いだからいいでしょと思わないでください。
まとめ:室内飼いでも冬でもノミの危険あり!1年中しっかり予防しよう!
春になると、フィラリア予防や予防接種で多くの患者さんが動物病院へやってきます。
診察の中で、ノミ予防の話を聞くと、「室内飼いだからしていない」、「夏だけしている」という人が多いように思います。
たかがノミ、とあなどっていると、病気になるリスクが高くなり、駆除や治療が大変になります。
基本的には月に1回(3ヶ月に1回の薬もある)の投薬で予防できます。
しっかり予防しましょう!
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