こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
犬を飼っている人なら「フィラリア」は一度は聞いたことがありますよね。
そう、春になったら予防しましょうって言われるアレですね。
こういう人、多いんじゃないでしょうか。
今日は、犬を飼っている人なら必ず知っておいてほしいフィラリア症について解説します。
フィラリアとは?
フィラリアの幼虫は1㎜以下と非常に小さいです。
幼虫は、脱皮しながらL1(ミクロフィラリア、第一期幼虫)からL5(第5期幼虫)までの5段階の成長をします。
L5から成長して成虫になると、15〜30㎝ほどの、ちょっと太めのそうめんみたいな形になります。
蚊によって運ばれたフィラリアが犬の体内に入りこみ、心臓に寄生することによって、さまざまな症状が出ることをフィラリア症といいます。
フィラリアは蚊によって運ばれ、犬から犬へと広がっていきます。
日本には、フィラリアを媒介する蚊は16種類いるといわれています。
トウゴウヤブカがフィラリアの発育に最も適しているのですが、日本ではアカイエカやヒトスジシマカの分布が広く、主にフィラリアを媒介する蚊です。
もちろん私たちの周りにいる全ての蚊がフィラリアをもっているわけではありません。
しかし、1973年に長崎市でおこなわれた調査で、
アカイエカ 38/2074匹(1.8%)
ヒトスジシマカ 5/157匹(3.2%)
がフィラリアを保有していたというデータがありました。
多いとみるか、少ないとみるか、むずかしいところですね。
フィラリアの生活環(ライフサイクル)は?
フィラリアを媒介するのは、蚊です。
フィラリアの一生をみていきましょう。
順番に説明しますね。
①フィラリア(L3)をもった蚊が、犬を吸血。
犬の体内にL3が入ることで、犬はフィラリアに感染。
②犬の体内に入ったL3は、皮下や筋肉、脂肪組織を移動しながらL4、L5と成長。
③L5は血管に入り、心臓の肺動脈をめざして移動。
④肺動脈にたどりついたL5は成虫になる。
⑤成虫が産卵し、ミクロフィラリアがうまれる。
⑥ミクロフィラリアは血液中をただよいながら、蚊に吸血されるのを待つ。
そして蚊が吸血。
⑦蚊の体内に入ったミクロフィラリアは、L1、L2、L3へと成長。
L3は、蚊の口先まで移動して、再び犬へ入るのを待つ。
これを繰り返してます。
簡単に言うと、
L1→L2→L3→L4→L5と成長してます。
犬のフィラリア症の症状は?
フィラリアに感染してすぐの初期は、症状が出ません。
また、フィラリアの寄生数が少ない場合も無症状なので、ほとんど気づきません。
病気が進行してまず最初に気づくのは、のどに何かつまったような「咳」です。
そして、運動や散歩を嫌がったり、すぐに疲れたりするようになります。
フィラリア症に感染しても、すぐには症状に気がつきません。
症状が出たときには、すでに重症!
軽度
- 無症状
- ときどき咳をする
- 運動をいやがる
↓
中等度
- 咳が増える
- 運動をいやがる
- 元気食欲がなくなる
↓
重度
- 慢性的な咳
- 運動後に失神
- 呼吸が浅い、苦しい
- お腹がふくらんでいる(腹水がたまる)
- 元気食欲がない
大静脈症候群(ベナゲバシンドローム)とは?
フィラリア症の急性の症状で、致死的状態です。
本来、フィラリアの成虫は、肺動脈内に寄生します。
しかし、フィラリアが寄生している量が多いと、成虫が右心室から右心房、そして後大静脈へ移動します。
すると、大静脈から心臓への血流が妨げられることになり、心不全を起こします。
この状態を大静脈症候群といいます。
そのほかにも、
- 元気・食欲低下
- 呼吸困難
- 虚脱
- 血色素尿(赤いおしっこ)
などの症状が突然みられます。
大静脈症候群と診断した場合、すぐに成虫を心臓から摘出しないと2〜3週間以内に死亡してしまいます。
まとめ:フィラリア症は初期は気づかず、症状がでたときにはすでに重症!
「フィラリア予防は毎年春になったらする」ことはほとんどの人が知っていると思います。
しかし、フィラリア症とはなんなのか、どんな症状がでるのか、については知らない人が多いです。
フィラリア症とは何か、なぜ予防しなければならないのかをぜひ知っておいてくださいね。
ということで、次回は「フィラリア予防」についてお話ししますね。
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