こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
前回は犬のマダニについてお話ししましたね。
今回は、犬のツメダニ症についてお話しします。
同じダニでも全然違います。
犬のツメダニ症とは?
爪のなかに寄生するダニなのかな?
特徴的な”爪”を持ったダニのことで、犬の背中やしっぽの付け根になどに生息しているんだよ。
ツメダニは、
- 主に犬に寄生するイヌツメダニ(Cheyletiella yasguri)
- 主に猫に寄生するネコツメダニ(C. blakei)
- 主にウサギに寄生するウサギツメダニ(C. parasitovorax)
などが代表的です。
「主に」と書いたのは、この3つのツメダニは宿主特異性が低く、犬、猫、ウサギ全てに感染する可能性があるからです。
たとえばネコツメダニが犬に寄生することがある、とか。
人にもうつるの?
人にも感染する人獣共通感染症だけど、人の皮膚では繁殖できないんだ。だから、かゆみや湿疹などの症状が一過性に出るぐらいだね。
- 体長0.3〜0.5㎜で、肉眼ではほとんどみえない
- 卵→さなぎ→幼虫→若虫→成虫と成長し、寿命は約35日間
- 頭部にフックのような爪をもっている
- 爪を使って犬の皮膚の組織液を摂取して生活している
ツメダニの感染経路は?
ツメダニに感染した犬と直接接触することでうつります。
また、ツメダニは宿主の体を離れても数日間は生存可能です。
ベッドやタオルなどを介して、間接的に別の犬へ感染することがあるということです。
犬のツメダニ症の症状は?
- 大量の白いフケ
- 湿疹
- かさぶた
- 脱毛
- 皮膚の炎症
一番特徴的な症状は大量の白いフケ。
ツメダニが大量に増えると、白いフケがたくさん歩いているようにみえるので、”歩くフケ(Walking dandruff)”とよばれます。
発生場所は背中から腰にかけて多いですが、しっぽの付け根や頭、耳の付け根にもみられます。
被毛は粗剛(かたくてバサバサ)のことが多いです。
また、ツメダニが皮膚を刺すことによる湿疹やかさぶたがみられます。
かゆみがあるので、強くひっかくことにより、脱毛や皮膚の炎症がひどくなります。
1才未満の子犬では症状が強くみられますが、成犬では無症状のことが多いです。
気づかないうちに感染源となっているかもしれません。
猫やウサギを飼っている場合は、犬から感染する可能性があるので注意が必要です。
犬のツメダニ症の症例紹介
それでは、実際の症例を紹介します。
今回は、生後3ヶ月のチワワちゃんです。
ちょっとぶれていますが、頭部に大量の細かい白いフケがみえますね。
背中から腰にかけて全体的に白いフケがたくさん。
この辺りの毛とフケをセロテープでペタペタ採取します。
そして顕微鏡で観察すると…
いました、ツメダニ。
残念ながら卵はみつけられませんでした。
ツメダニ症の治療法は?
- 駆虫薬
- シャンプー
この2つが重要です。
駆虫薬は、フィプロニル製剤やセラメクチン製剤などを使います。
同時に、シャンプーを週に1回、1ヶ月ほど続けましょう。
同居している猫やウサギがいたら一緒に治療しましょう。
フケやかゆみがなくなり、毛検査をしてツメダニが検出されなくなったら治療終了です。
ツメダニ症の予防法は?
ツメダニは、宿主から離れても数日間は生存できます。
なので、感染した犬の毛やフケが地上に落ちて、それに接触することによって間接的に感染することがあります。
床やケージ、ベッドなどの生活環境は徹底的に掃除し、コームやタオルは使い回さないようにしましょう。
まとめ:ツメダニの症状は大量のフケが出るのが特徴!家に迎えたら病院で検査を受けよう!
ツメダニなんて初めて聞いた!という人も多いと思います。
犬では大量のフケが出るのが特徴で、人では強い症状は出ないものの人獣共通感染症です。
とくに1歳未満の仔犬で強い症状が出ることがあり、ペットショップやブリーダーのところですでに感染している可能性が高いので、家に迎えたら一度検査を受けてみるといいですね。
コメント