こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
犬の皮膚疾患の中でもとくにかゆみが強いのが「疥癬」。
わりと遭遇することの多い皮膚疾患です。
今日は犬の疥癬について解説します。
犬の疥癬とは?
イヌセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei var.canis)による皮膚疾患を疥癬といいます。
ヒゼンダニ症ともよばれます。
季節性がなく、強い感染力と強いかゆみが特徴。
どの年齢にも発症しますが、皮膚のバリア機能が低い犬(若齢、クッシング症候群、免疫抑制剤を投与中)に発症が多いです。
疥癬の原因は?
イヌセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei var.canis)が、皮膚を穿孔して寄生することが原因です。
感染経路は、犬同士の接触。
感染力は非常に強いです。
皮膚の角質層にトンネル(疥癬トンネル)をつくって産卵し、幼ダニ→若ダニ→成ダニと成長します。
このライフサイクルは約10〜13日で、成ダニは3〜4週間生存します。
イヌセンコウヒゼンダニは宿主特異性が強く、犬以外の動物に寄生した場合は産卵して増えることができません。
犬から離れた場合は2〜5日間しか生きられません。
疥癬の症状は?
- 激しいかゆみ
- 紅斑(皮膚表面の赤み)
- 丘疹(直径1㎝以下の皮膚の隆起)
- 脱毛
- フケ
- 痂皮(かさぶた)
とにかく激しいかゆみが特徴。
とくに耳介辺縁や肘の外側、お腹、顔に発症することが多いです。
下の写真は、耳介からイヌセンコウヒゼンダニが検出された犬で、ちょっとみにくいですが、大量のフケと、出血がみられました。
また、「耳介-足反射」という症状もみられます。
これは、犬の耳介を少しこするだけで、ひっかき反射がみられるというもの。
この反射があると疥癬の可能性が高いのですが、実際は他の皮膚疾患でもみられるので、疥癬特有の症状というわけではありません。
疥癬の検査法・診断法は?
症状や、症状が出ている部位から原因をいくつかに絞っていきます。
問診以外に病院で行う検査として、
- 皮膚掻爬検査(スクラッチ検査)
- 治療的診断
があります。
皮膚掻破検査(スクラッチ検査)
疥癬と同じような症状が出る皮膚疾患はいくつかあるので、確定診断は、顕微鏡でイヌセンコウヒゼンダニを検出することになります。
その方法が皮膚掻爬検査。
症状が出ている部位の皮膚を削り取るように採取して、顕微鏡で観察します。
顕微鏡で見るとこんな感じ。
これは卵を持っているイヌセンコウヒゼンダニですね。(中心の楕円形のものが卵)↓
別の部分を見てみると、卵が産みつけられていました。↓
検出率は20〜50%といわれていて、必ずしもイヌセンコウヒゼンダニが検出されるとは限らないのです。
イヌセンコウヒゼンダニが検出されなくても、疥癬じゃないとは言い切れないということね!
そのため、日をあけて複数回検査をおこなうこともあります。
治療的診断
イヌセンコウヒゼンダニの検出は難しく、症状などから疥癬が疑わしくても確定診断できないことが多いです。
その場合、駆虫薬で治療してみて反応があるかどうかで診断することもあります。
ただ、使用する駆虫薬は他の寄生虫にも効果があることが多いので、治療によって改善がみられたからといって疥癬の診断にはなりません。
疥癬の治療法は?
駆虫薬
- イベルメクチン
- セラメクチン
- サロラネル
- アフォキソラネル
- フルララネル
- フィプロニル
イベルメクチンの注射薬や経口薬が一般的な治療法です。
しかし、現在では有効な薬剤が増えてきていて、ノミ・マダニ予防薬を疥癬の治療薬として使用することもできます。
治療期間は使用する薬剤によって異なります。
例えばイベルメクチンであれば、隔週もしくは週1回の投与で1〜2ヶ月かかります。
シャンプー
治療の補助として、週1〜2回、シャンプーすることも有効です。
かゆみが強いときは
疥癬は、犬の皮膚疾患の中でも非常にかゆみが強いです。
一日中体をかいていて、夜も眠れないこともあるぐらいです。
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン剤やオクラシチニブを投与して、かゆみをおさえることもあります。
生活環境の清掃
疥癬は非常に感染力が強いので、同居犬がいる場合は、家の中もしっかりそうじしましょう。
ケージやベッド、タオル類を熱湯消毒するか、できれば新しいものに変えましょう。
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