こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
突然ですが、新人獣医師はいつ手術ができるようになるのでしょうか?
大学の授業で習う?
獣医になってすぐ教えてもらえる?
数年経ってからしかやらせてもらえない?
大学の外科実習で、実習犬や実習猫の避妊去勢手術を実際におこないますが、これで習得できるわけではありません。
大学を卒業して、獣医師になって動物病院で働き始めてから習得するんです。
今日は、獣医師1年目の頃の話、手術をどのように習得するかをお話をしたいと思います。
獣医師はどのように手術を習得するのか
結論から言うと、
「手術をしながら手術を学ぶ。」
です。
何事もそうだと思いますが、実際自分の手でやってみないと自分のものにはなりません。
手術の教科書という分厚い本もあります。
教科書で術式を勉強して覚えるのは悪いことではないんですが、実際生体に触れてみると思うようにいかないことばかり。
教科書を読んで「ここをメスでこう切ってこうはがす」など頭ではわかっても、実際に手術となるとまったくできません。
どのくらいの強さで、どのくらい速さでメスを入れればいいのか、教科書を読んだだけではわからないんです。
さらに、動物によって体のつくりも違いますし、同じ犬でも体型や内臓の位置、形が微妙に違います。
いつも教科書通りというわけにはいきません。
なので、まずは、院長や先輩獣医師の手術をひたすら見て覚えることになります。
それを何度も何度も続けて、手術のやり方がわかってきたら、難易度の低い安全な手術から順に手術を執刀するようになります。
獣医師が初めておこなう手術とは?
では、新人獣医師が初めて行う手術とはなんでしょうか?
いきなり骨折の手術や胆嚢摘出をやることはまずないと思います。
まずできるようになるべき手術は、
犬・猫の避妊去勢手術
これはどの動物病院でもおそらく同じでしょう。
動物病院で最も多くおこなう手術の1つで、術式も単純だからです。
しかし、この中のどの手術を一番最初に習得するかは、院長の方針によって多少違ってきます。
私が勤めていた病院では、まず、「犬と猫の去勢手術」から開始。
一般的な去勢手術はお腹を開けることがなく、単純で短時間で終わる手術だからです。
犬と猫では、猫のほうが簡単なので猫から始めるという先生もいるようです。
まあ確かに猫のほうが血管も細いし、やりやすいのかな。
新人獣医師はいつ頃から手術を執刀するのか?
新人獣医師が具体的にいつから手術を執刀するのかは、個人の成長と病院の方針によって異なってきますが、早くて6月ぐらいでしょうか。
つまり、4月に入社して3ヶ月ぐらい経ってからですね。
早いと思いますか?
私の病院も6月末ぐらいから手術を1人で執刀するようになりました。
最初は去勢手術から始め、徐々に避妊手術もやらせてもらえるようになりました。
病院によっては、
「入社して2週間で初めての手術をした」
とか、逆に、
「1年目は手術は何もさせてもらえない」
というところもあるようです。
院長の方針によってさまざまですね。
初めての手術:私の場合…
私が初めて1人で執刀した手術は猫の去勢手術でした。
皮膚の切開から止血、縫合…やること、覚えることはたくさん!
院長:「片方の睾丸は俺がとるからもう一つはやってみ。」
院長はいとも簡単に睾丸を摘出してしまうので、自分にもできるかなと思うのですが、なかなか睾丸が出てこない…
細かな描写は省きますが、なんとか睾丸摘出成功!
止血確認をして…閉腹。
ここで安心してはいけません。
麻酔から覚めて飼い主さんの元へ帰り、1週間後ぐらいに抜糸をして初めて手術終了。
初めて自分1人で執刀した患者さんは今でも忘れません。
抜糸後の皮膚もきれいになっていて、とても安心したのを覚えています。
それぐらい緊張したし、同時にうれしかった瞬間でした。
徐々に複雑な手術を習得
獣医になって半年から1年ぐらいは避妊・去勢手術を中心に執刀し、それ以降徐々に複雑な手術をすることになります。
子宮蓄膿症や腫瘍摘出手術、胃内異物、骨折…
など、いろんな手術を経験することになります。
しかし、眼科や整形外科、心臓外科など高度な専門技術を必要とするものは、一次病院で対応できないことが多く、その場合は専門の病院や大学病院に紹介します。
外科を専門的に学びたい人は、一次病院で経験を積んでからこのような専門病院に就職することもできます。
獣医の外科手術にセンスは必要か?
今まで一緒に働いてきた獣医師や院長を見て、
「あ、この人手術うまいな」
と感じる人とそうでない人がはっきりしていて、あくまでも私個人の意見ですが…
人間の外科医もそうかもしれませんが、やはり手術にはある程度のセンスが必要だなと感じます。
手先の器用さというのとはちょっと違います。
同じ内容の手術でも、患者さんが違えば全く違う手術になります。
血管が太かったり、腹腔内の脂肪のつき方が違ったり、手術の最終の目的が同じでもその過程は異なってきます。
1つとして全く同じ手術はないので、その状況にいかに対応するかが求められると思います。
手術全体の流れをイメージして、予想外のことにも対応できる人がセンスがあって手術が上手い人。
だと思います。
そういう私は手術が上手いのかと言われるとそういうわけではないので悪しからず…。
まとめ
獣医師の手術習得はまず難易度の低いものから始め、徐々に複雑なものを執刀するようになります。
外科手術はそれだけで根治が望める場合もあり、飼い主さんにとっても「最後の希望」みたいなところもあると思います。
私自身は難しい手術ができるわけではないので、心臓外科医や軟部外科、整形外科など複雑な手術ができる先生は本当に尊敬します。
私の大学の同期にも、外科を専門に修行している人が何人かいるので、ぜひ頑張って欲しいなと思います。

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