こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
年々飼育頭数が増えてきているハリネズミ。
飼おうかどうか迷っている人も多いのではないでしょうか。
動物病院への来院数も以前より増えています。
来院理由は健康診断から下痢や皮膚病などさまざま。
トゲトゲした針、これがハリネズミの最大の特徴ですが触るのはなかなかむずかしいですよね。
もし病気になったら、その異常に気づくのはなおさらむずかしいのでは…
と心配する人も多いと思います。
今日は、ハリネズミの病気のサインとしてどのようなものがあるのか、どのようなところに注意してみればいいのかを解説します!
Contents
ハリネズミを診てくれる動物病院はある?
獣医師はすべての動物が診療対象なので、もちろんハリネズミも診察の義務があります。
しかし、実際はハリネズミを診療対象にしていない動物病院が多く、連れていっても断られる場合があります。
ハリネズミを診てくれる他の動物病院を紹介されることもあります。
ハリネズミを家に迎える前に、近くにハリネズミを診察してくれる病院があるか必ず確認しましょう。
ハリネズミでよくみられる症状は?
それでは、実際にどんな症状で来院するのでしょうか?
皮膚がかゆい・針が抜ける・フケが出る
来院理由のうち、最も多いのが皮膚の症状です。
飼い主さんも気がつきやすい場所ですね。
- ダニの寄生(疥癬)
- 真菌感染(皮膚糸状菌症)
- 細菌性皮膚炎リンパ腫(腫瘍)
- 栄養性
- 脂漏症
- 針の発育にともなうかゆみ(若いハリネズミに多くみられます)
などがあげられます。

この中でも、ダニの寄生(とくに疥癬)が圧倒的に多いです。
本当によく遭遇する疾患です。
若いハリネズミだけでなく、高齢のハリネズミでもよくみかけます。
ペットショップやブリーダーのところで感染していることが多いので、家に新しくハリネズミを迎えた場合は注意してみてみましょう。
一度も動物病院に行ったことがないハリネズミも要注意です。
皮膚にできものがある
背中やお腹、顔にできものができることがあります。
- 腫瘍
- 膿瘍(膿がたまる)
腫瘍
腫瘍は高齢になるほど増えてきます。
乳腺腫瘍、リンパ腫、口腔内扁平上皮癌、軟部組織肉腫などが報告されています。
悪性のものも多く、早期発見が重要です。
病理学的には犬や猫と同じ腫瘍でも、エキゾチックアニマルの場合はわかっていないことも多く、治療の判断が難しいこともあります。
膿瘍
膿瘍とは、組織の中に膿がたまった状態をいい、できもののように腫れ上がります。
傷口などからの細菌感染が原因。
また、歯周病が原因で起こる根尖膿瘍で顔面が腫れることがあります。
血尿している
- 卵巣・子宮疾患
- 泌尿器疾患
2〜3歳以上のメスが血尿をしている場合、ほとんどが卵巣・子宮からの出血です。
子宮の腫瘍や子宮内膜炎、子宮内膜過形成が原因となることが多いです。
卵巣・子宮を全摘する手術をおこないます。

出血量が多いと命に関わるので、早めに病院を受診しましょう。
よだれ・口から出血・顔周りが腫れている
ハリネズミは触診するのがけっこうむずかしいのですが、口の中をみるのはより一層むずかしいんですね。
なので、詳しい検査をするには麻酔が必要となることが多いです。
- 歯周病
- 腫瘍(扁平上皮癌、悪性メラノーマなど)
歯周病
雑食性の高いハリネズミは歯周病が多くみられます。
歯と歯肉の間で細菌が増殖し、歯肉炎を起こします。
やがて、歯肉がとけて歯がぐらつきます。
そこからさらに細菌が入り込み、顔面が腫れたり、膿が出ることもあります。(根尖膿瘍)
腫瘍
ハリネズミでは悪性腫瘍である口腔内の扁平上皮癌が多く報告されています。
初期では、歯肉炎と区別がつきにくいので経過をみていく必要があります。

下痢をしている
- 不適切な食事
- 細菌性腸炎(サルモネラ属菌)
- 真菌性腸炎(カンジダ症)
- 寄生虫性腸炎(クリプトスポリジウム)
- 腫瘍(消化器型リンパ腫)
ハリネズミの正常な便は茶褐色から黒色で、バナナのように細長い形をしています。
一番の原因は食事によるものです。
普段与えないものを与えたり、急にフードを変更したり、思い当たることはありませんか?
治療は、抗生物質、整腸剤で様子をみることが多いです。
下痢が続くと脱水をおこすこともあるので、その場合は皮下補液をおこないます。
実際の診療では、食欲不振による濃緑色の軟便、下痢が多くみられます。その場合は食欲不振の原因をつきとめていくことになります。

食欲がない
- 食事の変化
- 環境の変化
- 口腔内疾患
- 腎疾患
- 肝疾患
食欲不振の原因は大きく分けて2つです。
- ストレス:家に迎えたばかり、飼育環境の変化、フードの変化、移動・輸送ストレス)
- 何らかの病気
ストレスか病気か、ということですね。
まずは詳しく問診をして、ストレスになりそうな出来事がなかったか、あれば改善して様子をみます。
そして視診、触診から糞便検査、尿検査、血液検査など何か病気が隠れていないか調べていきます。
立てない・歩けない
- ハリネズミのふらつき症候群(Wobbly Hedgehog Syndrome ; WHS )
- 変形性脊髄症
- 変形性関節炎
- 骨折
食欲はあるが立てない、動けないといった場合、まずはレントゲンで骨格系の確認をします。
骨格に異常がない場合、神経系の異常を疑うことになります。
ハリネズミのふらつき症候群は2歳以下のハリネズミでの報告が多いです。
初期は丸くなれないという症状からはじまり、ゆっくり進行していきます。
数ヶ月で完全麻痺になり、最終的には死亡する病気です。
根本的な治療がなく、QOLを維持するための強制給餌や点滴をしていきます。
変形性関節症、変形性脊椎症については、高齢のハリネズミにみられる神経系の疾患です。

お家でできる健康チェックとは?
ハリネズミは体が小さく、犬や猫と違って体調の変化に気づきにくいです。
さらに、いざ病院へ連れていっても、移動のストレスで病院に着いたときには丸くなってしまい、診察が難しいこともよくあります。

こんな感じ・・・
獣医師もよく視診、触診をおこないますが、飼い主さんからの情報も重要になってきます。
そこで、お家でできる日々の健康チェックを紹介します。
食欲があるか(食べ切っているかどうか把握できるぐらいの量がよい)
急激な体重の変化がないか(週1回は体重測定できるとよい)
便・尿に変化がないか(色、量、軟らかさ)
体をかゆがっていないか 針の根元に皮がむけたような痂皮(かさぶた)やフケがないか 顔や目の周りが粉をふいたようになっていないか 皮膚に炎症(赤みなど)がないか
ケージに針が抜け落ちてないか よだれはでていないか
ふらつきがないか、足をひきずっていないか
直接触ってチェックするのは難しいかもしれないので、透明のプラスチックケースに入れてよく観察するのもいいですね。
まとめ
最近はハリネズミを飼う人が増えてきて、診察でみる機会も増えています。
ハリネズミについてはまだ知られていないことも多く、獣医師も苦戦するところだと思います。
少しでも早くハリネズミの変化に気づくようにするためにも、飼い主さんの日々の健康チェクが非常に重要です!
ぜひ参考にしてみてくださいね。