こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
先日久しぶりにハリネズミの下痢に遭遇したので、今日はハリネズミの下痢について解説します!
診察室に入ってくるやいなや丸まってしまい…なかなか顔をみせてくれません。やはりハリネズミを診察するのはむずかしい…
ハリネズミの食べ物とは?
ハリネズミは肉食傾向の強い雑食動物です。
野生のハリネズミは、ミミズや甲虫、チョウ・蛾の幼虫、ナメクジなどを食べています。
野菜や果物も好みます。
しかしこれはヨーロッパのナミハリネズミについての情報。
一般的にペットとして飼育されているのはアフリカヨツユビハリネズミ。
野生下のハリネズミと同じような食事を与えると消化不良や下痢を起こしてしまいます。
飼育下のハリネズミにはこれを与えれば大丈夫、という正確な情報は残念ながらありませんが、高タンパク質、低脂質のフードが理想的といえます。
今はハリネズミ専用フード(ペレット)という便利なものを手に入れることができるので、それを主食にすればオーケー。
昔はハリネズミフードというものがなく、フェレットフードやキャットフードを与えることが多かったのですが、太りやすくなるので今も与えている人はハリネズミ用に変更したほうがいいでしょう。
ペレットはお湯でふやかして与える方法と硬いまま与える方法がありますが、どちらがよいかと聞かれると迷うところですね。
ふやかしすぎると歯石がつきやすくなり、歯周病になる可能性が高くなるし、逆に硬すぎると歯肉を傷つけてしまうかもしれません。
個人的には、ハリネズミは消化管が短く、消化に時間をかけられないので、フードはやわらかめがいいのではないかと思っています。
最初からやわらかくなっているペレットもあるのでそれでもいいかも。
そしてミルワームやコオロギなどの昆虫をタンパク源として必ず与えましょう!
歯の病気の予防にもなります。
あとは野菜や果物をおやつとして少量与えるとバランスがいいですね。
オススメのハリネズミ専用フードを紹介します。
ハリネズミセレクション イースター
まずはこちら。
イースター社のハリネズミセレクション。
ハリネズミフードの定番で、こちらを与えている人が一番多いような気がします。
食いつきがいいという意見が多いですが、もちろんなかには好みでない子もいます。
このフードに変えて下痢をしたとか、トラブルは今のところ少なそうといった印象。
ハリネズミフード 三晃商会
次はこちら。
小動物の用品やフードを開発している三晃商会のハリネズミフード。
こちらも人気ですね。
カリカリでもふやかしでも与えることができます。
口コミをみても、嗜好性は高いようなので、ほかのフードを食べない子はこちらに変えてみてもいいかも。
オッティモ ジクラアギト
最後にこちら。
ジクラのアギト オッティモ。
小粒なのでカリカリでも食べやすいと評判です。
やや値段が高めなので、ほかのフードをベースにこちらを混ぜてみてもいいですね。
ハリネズミは偏食の子が多いので、いくつかのフードを混ぜてみたり、昆虫や野菜を少量ずつ与えるなど、工夫が必要です。
ハリネズミの消化管・正常便の特徴とは?
ハリネズミの消化管は短く、単純な構造をしていて、消化管の通過時間は12〜16時間。
正常な便は、茶褐色から黒っぽい色で、やや細長い形をしています。
少し軟らかいぐらいが普通です。
ハリネズミの下痢の原因は?
さまざまな原因で軟便、下痢になります。
細菌性
おもにSalmonella属菌(サルモネラ菌)が原因となります。
サルモネラ菌はほとんどの動物の腸内に生息していますが、ハリネズミの場合は昆虫類を食べることで感染すると言われています。
ペットショップやブリーダーのところですでに感染している可能性もあります。
ハリネズミではいくつかの種類のサルモネラ菌が検出されていて、その中には人への感染例があるものも報告されているので、人獣共通感染症としても注意が必要です。
症状は下痢のほかに、食欲不振、脱水、嗜眠傾向(常に睡眠状態におちいっている)などがみられます。
真菌性
酵母菌の一種である、Candida albicans(カンジダ)の感染による下痢。
若齢のハリネズミで発生が報告されています。
カンジダは糖質をエサとするので、食餌が原因ともいわれていますが、詳しいことはわかっていません。
寄生虫
Cryptosporidiumu(クリプトスポリジウム)の報告があります。
若齢のハリネズミでは致命的です。
ほかにも、野生のハリネズミでは線虫、条虫、原虫が検出されていますが、ペットのハリネズミでの報告はありません。
腫瘍
消化器型リンパ腫が比較的多く報告されています。
メレナ(黒色便)、緑便、鮮血便、粘液便、食欲不振、体重減少もみられます。
エコー検査で消化管の肥厚がみられたり、試験開腹をして、その部分の病理検査をおこなうことで診断できます。
食餌性(異物摂取・不適切な食餌)
タオルなどの繊維類を誤って摂取すると、下痢を起こします。
この場合、消化管閉塞におちいる可能性もあり、急激な食欲不振、嘔吐もみられます。
また消化管が短いので、昆虫類など消化の悪いものを与えすぎると消化不良を起こしやすいです。
下痢の診断法は?
問診、触診、糞便検査をします。
糞便検査では寄生虫や細菌、消化不良の有無を判断できます。
犬や猫と同じ方法ですね。
糞便検査で異常がないにもかかわらず、食欲不振や体重減少がある場合は、血液検査やレントゲン、エコー検査をおこないます。
しかし、ハリネズミの検査はとても難しくて、安全に行える検査は糞便検査ぐらいです。
それ以上の検査となると、麻酔や鎮静が必要になることもあるので、実際は問診と糞便検査のみ行うことが多いです。
ハリネズミの下痢の治療法や対処法は?
ハリネズミの下痢の場合、内服薬や皮下補液、食生活や環境を見直すことで対処します。
食生活・環境の改善
まずは食餌内容や環境を見直して改善してみます。
たとえば…
- フードをふやかす(かゆ状にする)
- 昆虫類など消化の悪いものや生ものをひかえる
- フードを変更するときは少量ずつ時間をかけておこなう
- 室温24〜30℃、湿度40%前後に保つ(ハリネズミは体温調節機能が十分ではない)
これで改善される場合もあります。
内服薬
糞便検査の結果によって、抗生剤や駆虫薬を使うこともあります。
ハリネズミの場合投薬がまた大変で、錠剤をくだいて液体にとかした状態で処方するのですが、なかなか飲んでくれません…泣
ハリネズミで安全に使える薬の種類は少ないです。
乳酸菌などの整腸剤を使うこともあります。
糞便検査でなにも異常がみつからなかった場合は、整腸剤で様子をみることが多いです。
食欲不振や嘔吐もある場合は、皮下補液をして脱水を予防したり、できることを考えながらやっていきます。
緑色の便をしているけど大丈夫?
「べちゃべちゃの下痢ではないけど、緑色の便をしてる!」
ハリネズミを飼っていると、一度は見たことがあるかもしれません。
なので、濃い緑色の軟便をしていた場合は、食欲増進のために、コオロギやミルワームなどの昆虫類を与えてみるのもいいと思います。(与えすぎないように)
まとめ:ハリネズミが下痢をしたら?まずは環境・食餌内容をみなおそう
私個人の経験から言うと、ハリネズミが下痢で来院する場合、食餌量が減って一時的に濃緑色の軟便をしていることが多いように感じます。
糞便検査で異常が発見されることは少なく、環境・食餌内容の工夫や整腸剤の投与でたいていの下痢はおさまります。
しかし、ハリネズミは体が小さく、体調が急変することもあります。
たかが下痢、と放っておくのはよくありません。
便の様子はお家で簡単にチェックできるので、ささいな変化に気付いたら早めに動物病院へいきましょう。
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