こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
「血尿」と聞くと、膀胱炎かな?結石かな?と思いがちですよね。
犬や猫では泌尿器が原因であることが多いです。
しかし、ハリネズミの場合はそうではありません。
「じゃあ原因はなに?」
今日は、ハリネズミが血尿したときに考えられることについて解説します。
ハリネズミの血尿は子宮疾患の可能性が高い
動物が血尿をしていた場合、どんな病気を思い浮かべますか?
オスかメスかによって答えは違ってきますが、まず思い浮かべるのは膀胱炎や膀胱結石など泌尿器系の病気ではないでしょうか。
もちろん、ハリネズミでも膀胱や腎臓の疾患はあります。
しかし、メスのハリネズミが血尿した場合、まず子宮疾患を疑わなくてはいけません。
子宮から出血しているということですね。
子宮から出血する原因は?
- 子宮の腫瘍
- 子宮内膜過形成
- 子宮内膜炎
などが原因で、子宮から出血=血尿がみられます。
子宮の腫瘍
ハリネズミはもともと腫瘍の発生自体が多く、その中でもとくに子宮の腫瘍が多いと報告されているんですね。
2歳以上の中〜高齢での発生が多いです。
子宮の腫瘍には、
- 腺肉腫
- 子宮内膜腺癌
- 子宮内膜間質腫瘍
- 子宮平滑筋種
などがあります。
子宮内膜過形成、子宮内膜炎
子宮内膜過形成や子宮内膜炎では、子宮の腫瘍と同じような症状がみられます。
なので、子宮・卵巣を病理検査に出すまで、腫瘍なのか、それ以外の子宮の病気を鑑別するのはむずかしいです。
子宮疾患の症状は?
まずはじめに気がつく症状は、血尿や陰部からの出血です。
少量ずつポタポタ落ちることもあれば、一度に大量に出血することもあります。
鮮血なので、最も気づきやすい症状ですね。
子宮が重度に腫れると、お腹がふくれてきたな、大きくなってきたなと気づくこともあります。
そのほかにも、食欲不振、体重減少、元気消失がみられることがあり、全身状態は悪化する傾向にあります。
また、出血量が多くて貧血になると、皮膚や粘膜が白っぽくなります。
血尿がみられた場合の診断方法は?
まずは問診、触診。
ハリネズミの触診はやっぱりむずかしい・・・
まずは粘膜の色は正常か(貧血がないか)、お腹がふくれていないかなどを確認。
警戒して丸まってしまい、診察がむずかしいときは鎮静・麻酔をかけることもあります。
もし鎮静をかけることがあればそのままレントゲン検査、エコー検査をおこなって、子宮の異常がないか確認します。
しかしハリネズミは体が小さく、レントゲン検査やエコー検査で確定診断をすることはむずかしいです。
なので、子宮疾患が疑われたら試験開腹をおこなわなくてはいけないこともあります。
ただし貧血がひどく、状態が悪い場合は鎮静・麻酔は危険です。
試験開腹で子宮・卵巣を摘出して病理検査に出します。
この時点で初めて子宮の腫瘍なのか、それ以外の子宮の病気なのかがわかるんですね。
血尿が出た場合の治療法は?
メスのハリネズミに血尿がみられた場合、子宮に問題があることが多いのですが、先ほども説明したように、腫瘍なのか?そうでないのか?がわからないので、基本的に外科手術で子宮・卵巣を摘出します。
もちろん、手術を望まない飼い主さんもいます。
その場合は抗生剤や止血剤などで様子をみることになりますが、完治はむずかしいです。
子宮腫瘍だった場合の予後はどうなの?
病理検査の結果が子宮腫瘍だった場合、予後はどうなのでしょうか。
転移がなければ、外科手術で完治する病気です。
転移はないわけではないですが、まれといわれています。
予後は比較的よく、30〜784日(中央値303日)と報告されています。
子宮の病気の予防法はある?
ハリネズミの子宮の病気を予防する方法は、若いときに避妊手術をおこなうこと。
しかし、犬猫と違って、ハリネズミの避妊手術を日常的におこなっている動物病院は少ないです。
子宮・卵巣を摘出すれば子宮疾患は予防できるので、避妊手術はしておいたほうがいいでしょう。
また、ハリネズミでは乳腺腫瘍の報告も多く、避妊手術を若い時におこなうことによって予防発生率が低下すると考えられています。
まとめ:ハリネズミが血尿したらすぐに病院へ
ハリネズミの血尿は気づきやすい異常のひとつ。
子宮からの出血であることが多く、緊急の状態です!
すぐに病院へ行きましょう。
基本的には手術になるので、ハリネズミの手術をしてくれる病院をあらかじめリサーチしておくのも重要ですね。
ハリネズミの子宮疾患は比較的多く、とくに子宮の腫瘍の発生率は高いです。
予防の一つとして、若いときに避妊手術をしておくのもいいかもしれません。
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