こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
「うちの子、耳がかゆそうだし、何か臭う…」「外耳炎と言われて治療して、一度は良くなったけどまた同じ症状が出てるみたい。治らないのかな?」
犬では耳のトラブルは非常に多く、毎日のように外耳炎の子がやってきます。
耳をよくかく、頭を振る、臭う、赤い…など、程度は違えど症状はだいたい同じです。
外耳炎って単純に耳が炎症を起こしているだけでは?と思っている人もいるかと思いますが、実は犬の外耳炎が起こる原因はとっても複雑で、奥が深〜いのです。
今日は犬の外耳炎について書いてみようかと思います。
外耳炎とは?
まず、犬と人では耳の構造が異なります。
人の耳道は耳の穴から鼓膜までまっすぐ、つまり水平耳道のみですが、犬(猫も)の耳道は垂直耳道と水平耳道から構成されていて、L字型になっているんです。
このような特徴に加えて、犬は耳が垂れていたり、耳毛が多いということもあり、外耳炎を起こすことがとても多いです。
耳介から鼓膜までの部分を外耳といいますが、この外耳に何らかの原因で炎症が起こることを外耳炎といいます。
炎症は耳の穴の入口から鼓膜まで広がることもあり、放っておくと鼓膜の奥にある中耳、さらには内耳にまで広がってしまいます。
炎症が慢性化すると耳の穴が狭くなり、さらに汚れが溜まりやすくなるだけでなく、耳が聞こえなくなることもあります。
外耳炎の原因とは?PSPP(主因、副因、増悪因、素因)という考え方
外耳炎が起こる原因はとても複雑です。
①外耳炎を起こしやすい体質や構造(素因)があって、そこに②直接的な原因が加わり、さらに③外耳炎を悪化させる要因があって…というように、いろんな要因が複雑に絡み合って起こります。
外耳炎を起こしやすい体質や構造とは
①外耳炎を起こしやすい体質や構造(素因)とは…
- 垂れ耳
- 耳道が狭い(パグ、フレブル、シーズーなどの短頭種)
- 耳毛が多い(トイプードルなど)
- 高温多湿の環境
- 耳の中のできもの
垂れ耳の犬や耳道が狭い、耳毛が多い犬は耳道内の通気性が悪く、蒸れやすいので外耳炎を起こしやすいといえます。
耳の中に腫瘍や炎症性ポリープができると耳道を塞ぐようになってしまい、外耳炎を起こしやすくなります。
ただし、これだけで必ずしも外耳炎になるわけではなく、次に挙げる直接的な原因があって初めて外耳炎を発症します。
外耳炎を起こす直接的な原因
次に②主因直接的な原因とは…
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
- 脂漏症
- 異物(土、草、耳毛など)
- 寄生虫(耳ダニなど)
- 内分泌疾患(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)
- 自己免疫疾患
圧倒的に多いのはアトピー性皮膚炎と食物アレルギー。
アレルギーの場合は耳だけでなく、全身にも症状が出ていることがほとんどです。
もう1つ多いのが脂漏症。
皮膚の新陳代謝が異常に速くなり、フケや皮脂が多くなる状態のことですね。
コッカースパニエルやウエスティ、シーズーに多いです。
外耳炎が治るかどうかは、これらを治療できるかということになってくるわけですが…
寄生虫や異物は取り除くことで根治可能ですが、アレルギーや内分泌疾患が原因となると、完治は難しく、生涯治療が必要になることもあります。
外耳炎を悪化させる要因とは
そして最後に③外耳炎を悪化させる要因ですが、
- 細菌(ブドウ球菌など)
- マラセチア
- 誤った耳のケア
外耳炎によって皮膚バリア機能が低下すると二次的に細菌やマラセチアが増殖しやすくなります。
皮膚にもともと住んでいる常在菌ですが、過剰に増殖すると外耳炎をより悪化させてしまいます。
マラセチアは皮脂が大好きな酵母(真菌)で、マラセチアが増殖している耳では茶色っぽいベトっとした耳垢が多く、独特の脂漏臭がします。
また、綿棒を使った耳掃除や耳毛を必要以上に抜いたりと、不適切な耳のケアが原因で外耳炎が悪化することもあります。
治療を効率よく行い再発を予防するには、これらをいかにコントロールできるかが重要になってきます。
外耳炎の症状とは?
外耳炎の症状は比較的わかりやすいと思います!
- 耳をかゆがる
- 耳が臭い
- 耳が赤い
- 頭を振る
- 耳を触るのを嫌がる
こんな症状がみられたら早めに病院へ行きましょう!
外耳炎はどうやって診断するの?
- 問診、身体検査(先ほど挙げた症状が出ているか)
- 耳垢検査
- 耳鏡検査
耳垢検査では、色や臭いのほかに、顕微鏡で耳ダニやマラセチアがいるか?どんな細菌がいるか?を評価します。
耳鏡検査では垂直耳道から鼓膜までよーく観察し、皮膚の様子や異物がないか、できものがないかなどをチェックします。
外耳炎の治療法とは?
- 耳掃除(耳洗浄)
- 点耳薬
- 基礎疾患の治療
外耳炎の治療はこの3本柱。
まずは耳の環境を整えるために耳洗浄から始めます。
耳毛は抜いた方がよいが、炎症が強い場合は抜かない
耳掃除をする前に、やっかいなのが耳毛。
耳毛は目的があって生えているのですが、プードルやシュナウザーのように耳毛が多く換気が悪そうな場合や耳毛に耳垢が絡みついている場合は抜きます。
耳毛を抜くことで耳洗浄もしやすくなります!
しかし、耳道の炎症が強い場合は、耳毛を抜くことでかえって悪化してしまうことがあるので抜きません。
綿棒での耳掃除はNGです!
耳には自浄作用といって、耳道で作られた耳垢が奥から耳の入り口へ移動する性質があります。
犬が耳を振るのも耳垢を外に出そうとする行動なんですね。
綿棒を使ってしまうと、外に出ようとしている耳垢を奥へ押し込んでしまうことになります。
耳垢を取る場合は、耳の入り口の見えている範囲の耳垢のみをコットンでやさしく拭き取るだけにしておきましょう。
正しい耳洗浄の方法とは?
- 耳に洗浄液を入れる
- 耳の根元をやさしくマッサージ
- 犬に頭をプルプル振ってもらう
洗浄液はたっぷり入れましょう。
洗浄液は常温のままだと犬が嫌がることがあるので、人肌に温めるといいです。
耳の根元(垂直耳道と水平耳道を意識して)を30回ぐらいやさしくマッサージします。
最後に犬に頭を振ってもらい、洗浄液と耳垢を自然に出します。
これを何度か繰り返してください。
嫌がって耳掃除ができなければ、ムリせず病院で処置をしてもらいましょう!
点耳薬
耳の炎症を抑えることを目的に、ステロイドの点耳薬を使うことが多いかと思います。
抗生剤や抗真菌薬との合剤になっているものが多いですね。
炎症が強く、点耳薬を入れられないほど耳道が狭くなっていたり、痛みがある場合はステロイドの内服をおこなうこともあります。
基礎疾患の治療
これが一番重要。
耳だけ洗浄したり点耳薬をして一時的に良くなったようにみえても、外耳炎を起こす直接的な原因を治療しないとすぐに再発してしまいます。
なので、外耳炎があるときにはその背景にある原因は何なのか調べて、治療しなければいけません。
しかし、外耳炎の原因として多いのがアトピー性皮膚炎や食物アレルギー。
完治させるのは困難なので、いかに症状をコントロールするかが重要になってきます。
まとめ:外耳炎は犬によくみられ再発を繰り返すことも多い!耳の検査は定期的に受けましょう!
犬の外耳炎はとてもよくみられる病気で、再発を繰り返すことも多いです。
よかれと思ってやっていた家での耳掃除も、方法を間違えると外耳炎を悪化させてしまいます。
家での耳掃除がむずかしいな、耳の臭いや耳垢を定期的にチェックしてみて、なんか変かな?と思ったら早めに動物病院へ行きましょう。
コメント