こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
初心者でも飼いやすいということで、ハムスターは人気ですね。
ハムスターは柔らかい毛が特徴ですが、脱毛したり、フケが出ていたり、かゆみがあったり…
ハムスターは皮膚病が多いです。
今日は、ハムスターの皮膚病について解説します!
ハムスターでみられる皮膚の症状は?
ハムスターの皮膚疾患では、どのような症状がみられるのでしょうか?
- 脱毛
- かゆみ
- 皮膚が赤い
- 皮膚がジュクジュクしている
- フケが多い
- ケガ
- できものがある
パッと見ただけで分かるものもあれば、触らないと気づかないものあります。
ひっくり返してお腹側をよく観察することも重要です。
ハムスターの皮膚病の原因と対処法は?
細菌性皮膚炎・膿瘍
細菌が原因となる皮膚病です。
赤み(紅斑)や脱毛、フケ、かゆみ、皮膚の肥厚(盛り上がり)がみられます。
背中よりお腹側に多くみられます。
皮膚の重なりや擦れが多いからですね。
また、咬み傷や擦り傷から細菌が入ると、膿みが貯まって膿瘍へと発展します。
細菌が増える原因としては以下のようなことが考えられます。
- 不衛生な環境
- 栄養不良
- 高温多湿な環境
- 外傷
- 肥満による皮膚の擦れ
- 過度なグルーミング
飼育環境が大きく影響していそうですね。
皮膚のバリア機能が低下し、細菌感染を起こす原因となります。
具体的には、
- Staphylococcus spp.(ブドウ球菌)
- Streptococcus spp.(レンサ球菌)
- Escherichia coli(大腸菌)
- Pasteurella pneumotropica(パスツレラ菌)
が主な原因菌となります。
抗生剤を内服しながら、原因となっている食生活や環境を改善して様子をみます。
真菌性(皮膚糸状菌症)
おもに頭部や体幹部の
- 脱毛
- 赤み
- フケ
- かさぶた
- かゆみ
がみられます。
主にTrichophyton mentagrophytes(トリコフィートン)という真菌が原因となります。
ほかにもTrichophyton simii、Microsporum canis、Microsporum gypseumが分離されることもあります。
- 不衛生な飼育環境
- 高温多湿の環境
- 免疫機能の低下(若齢、高齢、全身性疾患)
が原因となります。
毛を何本か抜いて顕微鏡で菌糸を確認するか、皮膚糸状菌用培地で培養することによって診断します。
治療は抗真菌薬(イトラコナゾールなど)の内服。
塗り薬もありますが、ハムスターが舐めとってしまうのであまり使わないほうがいいですね。
治療は長期戦になることが多いです。
毛包虫症(ニキビダニ症)
おもに耳や体幹の
- 皮膚の乾燥
- フケ
- 脱毛
Demodex criceti、Demodex auratinという毛包虫の寄生が原因。
しかし、これらの毛包虫はハムスターに常在していて、普段はおとなしく、悪さはしません。
- ストレス
- 免疫力の低下(若齢、高齢、妊娠、全身性疾患)
が引き金となって毛包虫が異常に増えると症状が出ます。
抜毛検査や皮膚掻爬検査をして顕微鏡で虫体を検出します。
治療は、イベルメクチンの内服。
しかし、根本的な原因はストレスや免疫力の低下にあるので、そちらを治療しないと治りが悪くなったり、再発することになります。
アレルギー性皮膚炎
- 脱毛
- かゆみ
- 結膜炎
- くしゃみ
- 手足の腫れ
がみられます。
- 体に合わない食べ物
- 床材などに含まれるアレルゲン物質
が原因といわれていますが、詳しいことはわかっていません。
スギやマツなどの針葉樹系の床材(シダーやパイン)によりアレルギーを可能性が高いと言われています。
犬や猫のようにアレルギー検査ができないため、診断はむずかしいです。
対処法として、
- とにかくアレルゲンとして疑わしいものを取り除く
- 広葉樹系の床材や紙製品に変える
- 偏った食生活を改善する
このように、食生活や床材などの飼育環境を変えてみて改善がみられれば、アレルギー性皮膚炎かなという診断ができます。
かゆみなどの症状が強ければ、ステロイドや抗生剤を使うこともあります。
物理的刺激による
単純な物理的刺激によって脱毛することもあります。
回し車や巣箱、床材との摩擦によって、手足やお腹に脱毛や炎症がみられます。
ケージを噛むクセのあるハムスターは鼻の頭が脱毛しやすいです。
ケージ内での動きを観察してみると原因がみつかるかも。
栄養生脱毛
- ひまわりの種など脂質が多い食餌
- ビタミンA・E不足
- たんぱく質16%以下の食餌
は脱毛の原因となります。
栄養不良になると、ほかの項目に書いたような疾患の原因にもなるので、食生活は重要なポイントです。
総合栄養食にする、ひまわりの種はおやつ程度にするなど、改善してみましょう。
腫瘍
ハムスターでは皮膚型リンパ腫、扁平上皮癌、異形線維種などが多く発生します。
皮膚にできることが多く、腫れたり、ハムスターが自分で引っ掻いて出血することで発見できます。
腫瘍の細胞診や組織学的検査で診断。
基本的には外科手術で摘出します。
内分泌疾患
ホルモンの異常ですね。
中高齢のハムスターには副腎皮質機能亢進症が多いです。
副腎の腫瘍化などによって、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで脱毛などの皮膚症状が出ます。
甲状腺機能低下症や卵巣子宮疾患でも脱毛がみられるという報告があります。
臭腺塞栓症
ハムスターには、マーキングや求愛のときに匂いを発する臭腺があります。
ゴールデンハムスターでは腰の両側に、ドワーフ種では腹部正中(へそあたり)に臭腺があります。
直径3ミリのほくろみたいになっていて、皮膚は黒くてべとついています。
臭腺はテストステロンの支配を受けるので、オスのほうが発達しています。
臭腺自体を何かの皮膚病だと間違えて来院する人も多いです。
臭腺塞栓症とは、臭腺に脂質がたまり、化膿や炎症を起こしてしまうこと。
原因は、
- ひまわりの種など脂質の多いフードの与えすぎ
- 肥満(体重が増えると臭腺からの分泌物も増える)
など。
これといった治療があるわけではありません。
食生活を改善し、定期的にキレイに拭いてあげましょう。
まとめ:ハムスターの皮膚病の病態は不明な点が多い。今後の研究に期待。
ハムスターの皮膚疾患は、たくさんの原因がからみ合って起こります。
病態が不明な点が多く、診断法や治療法もしっかり確立されていません。
今後の研究に期待したいですね。
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