こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
チンチラ(猫のチンチラじゃないですよ!)の特徴はなんといってもあのふわっふわの毛ですよね。
やはり皮膚のトラブルも多いです。
よくみられるのは、ほかの動物と同じように脱毛やフケ、かゆみ。
チンチラ特有の皮膚疾患もあります。
なので、チンチラの皮膚疾患を診るときにはチンチラの生態や性質を知っておく必要があります。
今日はチンチラによくみられる皮膚の病気について解説します。
知っておきたいチンチラの皮膚の特徴
まず、チンチラの皮膚の特徴として、被毛がとても密であるということ。
毛包は1㎠あたり1,000個あり、60〜90本の毛が生えています。
世界三大高級毛皮の1つとしても有名ですよね。
チンチラはもともと南米アンデス山脈の標高3,000mという乾燥した寒いところに生息していて、この厳しい環境に適応するための被毛なのです。
そのため、寄生虫は比較的少ないのですが、環境や手入れが悪いと皮膚トラブルが起こりやすくなります。
チンチラの皮膚疾患の原因は?
皮膚糸状菌症
真菌、いわゆるカビですね。
Trichophyton mentagrophytesの感染がおもな原因とされています。
Microsporum canisやMicrosporum gypseumも報告されていますが、まれです。
T. mentagrophytesは正常な被毛のチンチラにもいて、若齢や免疫力が低下した場合に発症します。
- 鼻や口、目、耳の裏、足に脱毛やフケがないか?
- 皮膚が赤くなっていないか?
- かゆみがないか?
よく観察してみましょう。
診断は、以下の方法でおこないます。
- 毛検査
- 真菌培養検査
毛検査では、被毛を顕微鏡で観察し、糸状菌の分節分生子をみつけます。(なかなかむずかしい)
真菌培養検査では、キットを使って真菌を培養します。↓
犬猫ではウッド灯検査をすることがありますが、はチンチラの場合は有用ではありません。↓
チンチラの真菌に多いT. mentagrophytesには反応しないのです。
治療は、
- 抗真菌薬(イトラコナゾール)の投与
- 患部の消毒
- 抗菌シャンプー(クロルヘキシジン/ミコナゾールシャンプー)
などがあります。
犬や猫では真菌薬の塗り薬を使うこともありますが、チンチラの場合は被毛が密なのでむずかしいです。
真菌培養検査を何度かおこない、陰性になるまで治療を続けます。
だいたい6〜8週間かかります。
細菌性皮膚炎
細菌が原因となって起こる皮膚炎で、以下のような原因が考えられます。
- 咬傷(ケンカ傷、自咬傷)
- 歯科疾患に関連する皮膚炎
多頭飼育している場合は、ケンカ傷から細菌感染を起こして膿瘍(膿がたまる)になることがあります。
そして、チンチラによくあるのが歯科疾患に関連した皮膚炎。
チンチラの歯は常生歯なので、不正咬合やう歯(虫歯)のトラブルが多いです。
歯が伸びすぎて、ほっぺたあたりに歯根膿瘍ができることがあります。
また、口の中の痛みや違和感からよだれが出たり、前足でかくことによって口周りの脱毛や皮膚炎を起こします。
- ほっぺたや目の下あたりができもののように腫れていないか?
- 下顎や前足がよだれでぬれていないか?
をチェックしてみましょう。
寄生虫
チンチラは被毛が非常に密なので、寄生虫による皮膚疾患はまれです。
毛噛み(Fur chewing, Barbering)
自分で、もしくは同居のチンチラにより毛を噛み切られてしまうことが原因です。
自分で毛噛みをする大きな原因はストレスですね。
ヒマだったり、過密飼育など、不適切な飼育環境がストレスになっている可能性があります。
切れ毛のように毛が短い部分がないか?をチェックしてみよう!
ファースリップ
敵に襲われたり、無理に押さえるとごそっと毛が抜けます。
これをファースリップといい、恐怖心から起こるといわれていたり、換毛の時期や内分泌と関係しているとも考えられています。
被毛のもつれ
被毛のもつれも立派な皮膚疾患になります。
チンチラは被毛が密集しているので、皮脂腺からの分泌液によって毛が絡まってしまうこともよくあります。
砂浴びをすることによって、自分で適度に分泌液を落としているんですね。
砂浴び不足になると、毛玉ができてもつれの原因になります。
毎日15〜20分ほど砂浴びをさせましょう。
砂浴びの時間が長いのも問題で、結膜炎や呼吸器疾患の原因になるので注意が必要です。
また、高温多湿ももつれの原因になるので、室温17〜21℃、湿度30〜40%で保つようにしましょう!
栄養性疾患
被毛の筋が弱くなると、毛が巻き毛のようになり、綿毛みたいになってしまいます。(綿毛症候群、コットンファー)
これは、高タンパク質のペレットの与えすぎによって起こります。
食物のタンパク質含有量は15〜18%になるようにしましょう。
粗タンパク質が28%をこえると過剰摂取になります。
腫瘍
チンチラでは腫瘍はあまりみられません。
まだチンチラに関する情報自体少ないので、飼育頭数が増えてくるにつれてもう少し腫瘍に関する報告が出てくるかもしれません。
まとめ:チンチラの皮膚病は生活環境を整えることである程度発症を防げる!
チンチラの被毛は非常に密で、他の動物にはみられないような特徴をもっています。
チンチラはもともと高温多湿の日本とは真逆の環境に生息しているので、ペットとして飼育する場合には、温度と湿度の管理が重要になります。
また、砂浴びを毎日させる、食事内容を見直す、ストレスのかからない生活環境にするなどの工夫をすることで、ある程度発症を防ぐことができます。
コメント