こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
今日はフェレットの下痢について解説します。
フェレットの消化管の特徴を知ろう!
フェレットは完全肉食動物です。
消化管は非常に短く、食物の通過時間も短いです。
小腸は約2m、大腸は約10㎝。
食物を食べて、便として排泄されるまで約2〜4時間。
早いですよね。
犬は約12〜24時間、人は約24〜48時間かかります。
- 消化管が非常に短く、消化速度が速くて吸収効率が悪い
- 消化酵素が少なく、食物をうまく分解できない
そのため、
- こまめに食餌をとる必要がある
- 排泄回数が多い
- 正常でも軟便
フェレットの便は歯磨き粉ぐらいの硬さで、常に少し軟らかいので、いつもの便を把握する必要があります。
正常便?下痢?
フェレットの下痢の診断でむずかしいのは、犬や猫で「軟便」と判断されるような便が、「正常便」である場合が多いことです。
胆汁の色素が便にまじって、緑色の軟便・粘液便がみられる場合もあります。
これらは病的な下痢ではなく、フェレットにとっては普通のことなので、飼い主さんは正常便なのか下痢なのか判断に迷いますよね。
いつもの便がどれぐらいの硬さや色なのかをしっかり把握しておきましょう。
フェレットの下痢の原因は?
それでは、フェレットの下痢の原因についてみていきましょう。
ウイルス性
- 腸コロナウイルス
- 犬ジステンパーウイルス
- ミンクアリューシャン病
腸コロナウイルス
伝染性カタル性腸炎の原因ウイルス。
緑色の下痢をすることから、グリーンウイルスとよばれていましたが、必ずしも緑色の便をするわけではありません。
感染力が強く、集団で発生が多い感染症。
腸コロナウイルスは、多くのフェレットがもっていると報告されていて、日本でもよくみられます。
健康であれば症状はでませんが、ストレスなどで免疫が低下すると、下痢や発熱がみられます。
致死率はそれほど高くありません。
糞便の遺伝子検査で診断します。
ワクチンや、ウイルスに対する有効な薬はありません。
犬ジステンパーウイルス
通常は犬やアライグマに感染するウイルスですが、フェレットにも感染します。
感染すると致死率100%。
下痢以外にも、皮膚症状、食欲不振、発熱、呼吸器症状などがみられます。
ワクチンで予防できますが、フェレット専用のワクチンは日本にはなく、犬のジステンパーワクチンを1年に1回接種します。
ミンクアリューシャン病
もともとアリューシャンミンクというフェレットの仲間に感染が多くみられたので、この名前がつけられました。
パルボウイルス科のアリューシャン病ウイルスが原因で、購入したときにすでに感染している可能性があります。
致死率ほぼ100%。
初期は無症状で、下痢以外に麻痺や呼吸器症状がみられます。
抗体検査がありますが、ほとんど無症状でいることと、ほかに似たような症状が出る病気があるので、アリューシャン病と診断するのはなかなかむずかしいです。
ワクチンや、ウイルスに対する有効な治療法はありません。
細菌性
- ヘリコバクター
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
- マイコバクテリウム
などが原因菌として報告されています。
簡易の糞便検査では診断できず、特殊な染色や糞便培養が必要。
抗生剤や皮下補液で治療します。
寄生虫性
- コクシジウム
- ジアルジア
- クリプトスポリジウム
ペットショップなど集団で発生が多いです。
糞便検査で診断できます。
炎症性
炎症性腸疾患や好酸球性胃腸炎など、異常な免疫反応が原因と考えられています。
フェレットの下痢の治療法や対処法は?
本来なら、検査をおこない、原因を特定してからそれに対する治療をおこなうべきです。
しかし、フェレットの場合、下痢の原因がはっきりしなかったり、有効な治療法がないことが多いのです。
なので、下痢止めや乳酸菌生剤を投与、食事を変更、皮下補液をするなど、状態が悪化しないような対処をします。
炎症性腸疾患に対しては、猫用の低アレルゲン食へ変更するのもよいといわれています。
しかし、フェレットでは食物アレルギーの検査が確立されていないので、炎症性腸疾患と診断するのも困難。
ほかの治療をしてみて改善されなかった場合の対処法のひとつと考えておくといいでしょう。
食欲がないときにオススメの療法食はある?
下痢などの体調不良が原因でフェレットが食欲が落ちてしまうのはよくあること。
犬や猫であれば、下痢をしていた場合、半日〜1日絶食するという選択肢がありますが、フェレットは長時間の絶食には耐えられません。
なので、こまめに給餌する必要があります。
- 消化吸収のいいもの
- 高栄養なもの
- 嗜好性の高いもの
フェレットは食べ物の消化時間が短いので、消化吸収のいいものがいいですね。
食欲がないときはいつもより嗜好性が高く、高栄養なものを与えましょう。
オススメは動物病院でもよく使われるヒルズのa/d缶。
体調不良時や回復期に使われる犬猫用の療法食。
フェレットにも与えることができます。
フェレットバイトもオススメ。
食欲がないフェレットでもこれなら食べてくれます。
これらは、ちょっとフードの食いつきが悪くなったなという時でも少量混ぜるだけで食べてくれるようになるので、1つは常備しておいたほうが便利。
薬を混ぜて与えることもできるので、薬をなかなか飲まないフェレットにもオススメ。
フェレットの肛門脱(脱肛)は多い?
もうひとつ、フェレットの下痢のときに知っておいてほしいのが、脱肛。
排便回数が多かったり、便秘のときに強くいきむことが原因で肛門や直腸が体の外にでてしまうことですね。
フェレットは生まれてまもなくして、不妊手術や臭腺除去手術を受けていることが多く、ほかの動物にくらべると脱肛を起こしやすいです。
さらに、フェレットはもともと軟便や下痢になりやすいということもあって、脱肛を併発する子が多いんです。
軽度であれば、手で押し込めて下痢の治療をすればおさまります。
しかし、再発も多いです。
炎症がひどかったり、再発をくりかえすようであれば、麻酔をかけて肛門の周りを縫合しなくてはいけません。
まとめ
フェレットの便はもともとゆるめであることが多いので、正常なのか下痢なのか判断に迷うことがあります。
そのうえ、糞便検査でも異常がみつからないことがほとんど。
こう聞くと、病院に連れて行くべきか迷うかもしれません。
しかし、フェレットは体が小さく、体調も急変しやすい動物です。
便がゆるいという症状以外にも、食欲不振、元気がないといった症状があれば早めに動物病院で検査をうけましょう。
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