こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
最近、診察でチンチラにお会いする機会も増えてきているなーと感じます。
そこで今日は、最も多い来院理由の1つ、「チンチラの下痢」について解説します。
チンチラの消化管の特徴を知ろう!
チンチラはうさぎやモルモットと同じ完全草食動物です。
大きな盲腸をもち、後腸発酵をおこない、食糞します。
チンチラの消化管はうさぎやモルモットに似ていますが、十二指腸や下行結腸はやや長いです。
また、消化管の通過時間は12〜15時間。
チンチラのお腹の大半は消化管が占めるので、消化管の状態によって全身状態に大きく影響を与えるのです。
正常便?下痢?
チンチラの正常便は小豆大で細長く、茶〜黒色。
量はけっこう多いです。
毛づくろいで毛を飲み込むと、便はいびつになり、数珠状につながった便が出ます。
硬便と盲腸便の2種類の便をします。
一口に「下痢」といっても、
- 軟便
- 粘液便
- 泥状便
- 水様便
- 血便
- 腸重積・直腸脱を伴うもの
など、状態はさまざまです。
チンチラの下痢の原因は?
チンチラの下痢の原因は大きく分けると
- 食餌性
- 医原性
- 細菌性
- 真菌性
- 寄生虫性
- 心因性
順番に説明していきます。
食餌性
- 急な食餌変更
- カビの繁殖した牧草
- 高炭水化物(糖質)の食餌
- 生野菜のあげすぎ
- レーズンやナッツなどおやつのあげすぎ
やはりいつもと違うものをあげるのは下痢の原因になります。
十分に乾燥した、新鮮な牧草とペレットをバランス良く与えるようにしましょう。
おやつにレーズンやくるみを与えるのはいいですが、少なめにしておきましょうね。
医原性
薬によるものですね。
チンチラには使えない抗生剤があります。(ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系、リンコサミドなど)
これらを使用すると、Clostridium属、いわゆる悪玉菌が増殖します。
さらにClostridium属が毒素をつくり、これが原因で下痢を起こします。
通常、安全とされている抗生剤でも下痢を起こす可能性があるので、注意が必要です。
細菌性
- Clostridium perfringens(クロストリジウム属)
- Enterobacter aerogenes(エンテロバクター属)
- Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ属)
- Yersinia enterocolitica(エルシニア属)
他にもたくさんありますが、これらの細菌は、消化器症状だけでなく、神経症状や呼吸器症状、皮膚症状の原因にもなります。
Clostridium perfringensは毒素を産生し、重度の下痢の原因となります。
食欲不振や腹痛のため元気がなくなり、死に至ることもあります。
クロストリジウム属は自然感染の場合もありますが、抗生剤の間違った使い方によって増殖することがほとんどです。
真菌性
カビですね。
食餌中にAspergillus属の真菌が増殖し、アフラトキシンという毒素を産生することによって下痢を起こします。
下痢の他にも、食欲不振、体重減少、突然死も起こします。
また、Cyniclomyces guttulatusは正常腸内細菌叢を構成する酵母菌の1つですが、軟便や下痢のチンチラで増加してみられます。
寄生虫性
- ジアルジア
- コクシジウム
- トリコモナス
- クリプトスポリジウム
ジアルジアは正常なチンチラの腸管内にもいて、ペットのチンチラのジアルジア保有率は30〜66%という報告があります。
ストレスや加齢、劣悪な環境などが原因で増殖します。
コクシジウムは若齢のチンチラで下痢や腸炎の原因となります。
クリプトスポリジウムは、チェコから輸入されたチンチラに発症が多くみられます。
そのなかでも、Cryptosporidium ubiquitumは、人への感染も報告されているので注意が必要です。
心因性
ストレスや劣悪な環境、環境の変化など。
その他の原因
肝不全や腎不全、消化管閉塞、熱中症などにともなって下痢をすることもあります。
どうやって検査するの?
問診
まずは、発症時期、期間、頻度、食欲、活動性など詳しく問診します。
また、食餌や飼育環境の変化についても確認します。
下痢の診断には問診が非常に重要なので、どんなささいなことでも獣医師に伝えるようにしましょう。
便の状態を写真にとっておくのもいいと思います。
身体検査
チンチラはお腹の大半を消化管が占めるので、腹部触診は必ずおこなうべきです。
腸が張っていないか、硬さ、痛みがあるか、腫瘤がないかなど、様々な情報を得ることができます。
糞便検査
糞便検査も必ずおこなう検査。
チンチラは絶えず排便をしているので、簡単にできる検査の1つですね。
寄生虫やコクシジウムのオーシスト、白血球、赤血球などを検出できます。
クリプトスポリジウムは検出が難しいため、遺伝子検査が必要なこともあります。
画像検査・血液検査
ここからは、チンチラに負担をかけることもあるので、必ずしもおこなう検査ではありません。
下痢以外にも、元気がない、体重が減ってきた、腫瘍の可能性がある場合にレントゲンやエコー、血液検査をおこないます。
治療法は?
原因に対する治療をおこないます。
抗生剤
- エンロフロキサシン
- クロラムフェニコール
- ST合剤
駆虫薬
フェンベンダゾール
真菌薬
- イトラコナゾール
- ナイスタチン
などですね。
これらがチンチラで安全に使える薬です。
脱水がひどい場合は、皮下補液もおこないます。
予防法はある?
- 適切な食餌を与える
- 飼育環境をととのえる
この2つがとても重要。
適切な食餌とは
新鮮な乾燥した牧草をメインにして、チンチラ用ペレットは適量。
炭水化物や生野菜はあげすぎないように!
おやつのドライフルーツやナッツ類もできればやめましょう。
適切な飼育環境とは
適度な室温や湿度にして、ケージ内も常に清潔に保ちましょう。
寄生虫などは糞便を介してほかのチンチラに感染するので、多頭飼いの場合はケージを別にしたほうがいいですね。
人獣共通感染症のクリプトスポリジウムの可能性もあるので、熱湯やエタノールでケージや食器などを消毒するのも効果的です。
まとめ:チンチラが下痢をしたら、まずは病院へ。
「チンチラが下痢をしてるけどしばらく様子みてもいいかな?」
迷うかもしれません。
すぐに行けない場合は、食餌など思い当たる原因を改善してみるのもいいでしょう。
しかし、チンチラはからだが小さく急変することもあるので、まずは病院へ行きましょう!
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