こんにちは、獣医師のにわくま(@doubutsu_garden)です。
本来は人の薬なので、ビオフェルミンを常備薬として置いている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
結論から言うと、犬に与えても問題のない薬ではありますが、いくつか注意点もあります。
今日は犬に対するビオフェルミンの使い方や注意点などを解説します。

Contents
ビオフェルミンとは?
ビオフェルミンは人にも犬にもよく使われる整腸剤。
- ビフィズス菌
- 乳酸菌(アシドフィルス菌・フェーカリス菌)
から構成されています。
ビフィズス菌と乳酸菌は善玉菌として知られ、よく混同されますが、別物です。
乳酸菌の特徴として、
- 人や動物の腸管以外に漬物など一部の発酵食品や牛乳・乳製品、自然界に棲息
- 人の腸内では数が少ない(ビフィズス菌99.9%:乳酸菌0.1%)
- 酸素に強く、酸素のある環境にも棲息
一方、ビフィズス菌の特徴として、
- 主に人や動物の腸管に棲息
- 酸素に弱く、酸素の少ない大腸に多く棲息
- 人の腸内に棲息する菌として、もっとも優勢で中心的な善玉菌
- 大腸内で乳酸よりも殺菌力の高い酢酸をつくる
- 酢酸は炎症やアレルギーなどを抑える免疫細胞を増やす働きがあることも分かっている
大腸の善玉菌のほとんどがビフィズス菌であり、悪玉菌をやっつけ、腸内フローラのバランスを保つ大切な役割を果たしています。
腸内環境を整えるには、この善玉菌を増やすことが重要なんですね。
ビオフェルミンS?ビオフェルミンR?
ところでビオフェルミンには、ビオフェルミンSとビオフェルミンRがあるのをご存知ですか?
ビオフェルミンS:指定医薬部外品。市販で入手可能。
ビオフェルミンR:医薬品。病院で処方。
ビオフェルミンSに含まれる乳酸菌は何の耐性も持たない乳酸菌。
例えば、病院で抗生剤を処方されることがありますよね。
ビオフェルミンSに含まれている乳酸菌は、抗菌薬と同時に飲むと死んでしまい、その整腸作用の効果が得られなくなってしまいます。
一方、ビオフェルミンRには耐性乳酸菌と呼ばれる乳酸菌が配合されています。
つまり、抗生剤を併用しても死なない力を獲得している乳酸菌。
抗生剤を服用中でも整腸作用の効果を得ることができるんですね。
ビオフェルミンの効能は?
- 整腸(便通を整える)
- 軟便
- 便秘
- 腹部膨満感
人で期待できるビオフェルミンの効果です。
犬でも同じような作用を期待して使われることが多いです。
下痢や便秘、軟便、お腹が張っているときにビオフェルミンを使うんですね。
また、最近では腸内の環境が免疫機能にも大きな影響を与えることがわかっています。
ビオフェルミンには、免疫の異常であるアトピー性皮膚炎やアレルギー性疾患を改善できる可能性もあります。
さらに、感染症やがんなど、免疫を高めたい時にもビオフェルミンは使われることがあります。
犬に自己判断でビオフェルミンをあげても大丈夫?
ビオフェルミンは人用の薬ですが、犬にも使える比較的安全性の高い薬。
飼い主さんが自己判断で犬にビオフェルミンを飲ませても、それほど問題にはなりません。
すべての下痢に効くわけではありませんが、下痢をしているときにビオフェルミンを与えることは間違ったことではありません。
犬にビオフェルミンを与えるときの注意点
自己判断で与えてもいいとは言ったものの、いくつか知っておいてほしいこともあります。
用量用法を守る
ビオフェルミンは比較的安全性の高い薬ですが、用量用法を守って使うことも大切。
用量が多くても効果が上がるわけではないし、用量が少なすぎれば効果はありません。
また、ビオフェルミンSは抗生剤と一緒に使うと乳酸菌が死滅し、効果がありません。
古いものや間違った保管をしているビオフェルミンもダメ。
ビオフェルミンの効能を得るためには、しっかり用法用量を守って犬に与えることが大切。
単純な下痢ではなく、病気が隠れている可能性
下痢をしていても元気・食欲があるようであれば少しビオフェルミンで様子を見てもいいのですが、2〜3日たっても改善されない場合は病院へ行きましょう。
単純な下痢ではなく、内臓の疾患に伴って下痢をしている場合もあります。
家で様子を見ているうちに、どんどん病気が悪化して危険な状態になってしまうかもしれません。
下痢を起こす病気には、子宮蓄膿症や急性膵炎など短期間で一気に悪化し命にかかわるような危険な病気もあります。
様子を見るのは2日、せいぜい3日ぐらいにしましょう。
アレルギーが出る可能性もある
ビオフェルミンに対するアレルギーは少ないですが、ゼロではありません。
乳酸菌に対するアレルギーがあると、ビオフェルミンを与えることによって調子をさらに悪化させてしまうことがあります。
ヨーグルトなどの乳製品を与えて下痢をしたり、体調が悪くなったことがある場合はやめておきましょう。
全ての犬に効果があるわけではない
ビオフェルミンはあくまで整腸剤で、万能薬ではありません。
ビオフェルミンを与えて下痢が改善される場合もありますが、逆に調子が悪くなる犬もいます。
老齢犬、子犬、持病がある犬の場合はまず獣医師に相談
老齢犬や子犬の場合が下痢をしている場合は、まず診察を受けることをオススメします。
ビオフェルミンが良いか悪いかというよりも、感染症や何かほかの病気である可能性があるからです。
また、持病があってほかの薬を飲んでいる場合もかかりつけの獣医師に相談しましょう。
特に抗生剤を処方されている場合は、要注意です。
犬用のビオフェルミンはある?
動物用医薬品版のビオフェルミンが、「ビオイムバスター」。
ビオイムバスターには、ビオフェルミンと同じ
- ビフィズス菌
- アシドフィルス菌
- フェーカリス菌
が含まれています。
また、パンクレアチンという消化酵素剤も配合されています。
犬猫用なので、嗜好性が高いのが特徴。
分割線も入っているので、与える量が分かりやすいですね、

>>ビオイムバスター はこちらで購入できますよ。
まとめ
ビオフェルミンは副作用も少なく、比較的安全性の高い薬です。
人でもよく使われる薬なので、家に常備してある人もいますよね。
「犬が下痢してるからとりあえずあげてみようかな」
それほど問題にならないですが、飼い主さんが「下痢だからとりあえず」「便秘だから」と判断するのはやはり危険です。